どんぐり君とおにぎり君のママの読書日記

アラフォー、2男の母のブックレビューです。読んだ本の簡単な内容・あらすじ・感想をメモしてます。

森絵都さんの「永遠の出口」を読みました。~70年代80年代に小中高を過ごした女の子の日常に、ああ、あったかもしれないと何度も共感する作品。

 

森絵都さんの「永遠の出口」を読みました。

永遠の出口 (集英社文庫(日本))

永遠の出口 (集英社文庫(日本))

  • 作者:森 絵都
  • 発売日: 2006/02/17
  • メディア: 文庫
 

 内容・あらすじ

「私は、“永遠”という響きにめっぽう弱い子供だった。」誕生日会をめぐる小さな事件。黒魔女のように恐ろしい担任との闘い。ぐれかかった中学時代。バイト料で買った苺のケーキ。こてんぱんにくだけちった高校での初恋…。どこにでもいる普通の少女、紀子。小学三年から高校三年までの九年間を、七十年代、八十年代のエッセンスをちりばめて描いたベストセラー。第一回本屋大賞第四位作品。(Amazon内容紹介より)

感想

70年代80年代に小中高を過ごした、わりと普通の女の子の話

ちょっと憎らしくなるぐらい都合のいいお父さん。
紀子のことが心配でたまらないお母さん。
紀子が小さい頃には意地悪身なものいいもしたけれど、恋人が出来れば丸くなり、長女らしく、家族のことを考え、静かに失恋をし、さっと紀子より先に家を出るお姉ちゃん。
そして、すごく飛び抜けたところがあるわけではないけれど、ユニークな紀子の小学校時代、中学校時代、高校時代の日常を描いた作品。
小学生の時にお友達の誕生会で感じた微妙な感覚や、恋に恋した高校時代など、ああ、そうだったっけと、その時の感情を鮮やかに思い出させます。

小学校時代の女友達と完全な悪者の先生

小学生の頃は女友達同士のちょっとした違いが気になるもの。
自分達の仲間の常識からはずれるものが「信じられない」となりがちです。
ちょっと違った家庭環境の良恵の家を訪れた時の戸惑い、違和感に共感し、そうそう、小学校の時は何か違うな、という違和感をうまく言葉に表現できなかったなと、その感覚を思い出しました。

小学校時代には、嫌な先生が登場します。
明確な悪役の登場、黒魔女にクラス全員で立ち向かうところ、特にトリが立ち上がるところにワクワクしました。

中学校時代にはちょっとぐれすぎ

中学時代ののりこは万引きをしたり、悪そうな先輩の家に入り浸たったり、結構ぐれます。
70年代の中学校は結構荒れていたとも言うし、社会情勢から見れば、これが普通?なんでしょうか。
きっかけはお母さんに前髪を切られすぎたせいか、でもそれはほんのきっかけに過ぎず、紀子の中では何かムラムラとしたものが溜まっていたようです。
中学時代の章は少し母親目線で心配しながら読みました。
思春期怖い。。。

高校時代の恋

一転して、高校時代は初めてできたボーイフレンド安田くんとの恋愛で、何も見えなくなります。
ただ、両想いになった相手と一緒にいるというだけで嬉しくて、もはや相手を1人の人間として見ていない、このはじめての恋の感じが痛くも懐かしい感じがしました。
安田君との恋が終わり、その後町で安田君と再会するときの紀子がよいです。
少し大人になった感じが何とも言えません。
おわった恋愛について、小学校時代の友人と話すところも好きでした。

その後の紀子

終章ではその後の紀子の人生が、ダイジェスト版で語られます。
不倫したり、離婚したり、なかなか忙しい人生だった模様ですが、デザイナーになるという小学生の時友人に語った夢を貫き通したようです。

おすすめ度★★★★★

日常の出来事から、そのときの紀子の感情が、鮮やかに浮かび上がってきて、ああ、そうかもしれないと共感させる筆力が見事。

 

永遠の出口 (集英社文庫(日本))

永遠の出口 (集英社文庫(日本))

  • 作者:森 絵都
  • 発売日: 2006/02/17
  • メディア: 文庫