垣谷美雨さんの「あなたの贅肉落とします」を読みました。
内容・あらすじ
ダイエットは運動と食事制限だけではない。大庭小萬里はマスコミには一切登場しない謎の女性だが、彼女の個別指導を受ければ、誰もが痩せられるという。どうやら、身体だけでなく「心のゼイ肉」を落とすことも大事なようだ……。身も心も軽くなる、読んで痩せるダイエット小説。（Amazon内容紹介より）
感想
ケース別ダイエット成功者のお話
49歳の主婦が、18歳の女子大生が、32歳のサラリーマンが、10歳の小学生が、それぞれの道を経て結果として体重をおとします。
どれも成長ストーリーなので、読んでいて、まるで自分も体重を落とせたみたいで気分がいいです。
49歳の主婦のケース
最も共感したのは一番最初の49歳の主婦乃梨子のケース。
ある日のこと。
せっかく夫と娘に夕食を作ったのに、それぞれからやっぱり今日はいらないと連絡がきます。
主婦にとってはあるある。
乃梨子は日々そんなもやもやに煩わされています。
そんな乃梨子に大庭小萬里が行ったアドバイスは、主婦業の卒業でした。
乃梨子が具体的に取った行動は、
- 週に2回は夕食作り自体を手放すこと。
- 夫のワイシャツのクリーニングのためだけに通っているクリーニング屋への往復を夫にやらせること。
- 実家にいる、すでに働きに出ている娘を、家賃を納めさせること。
- 娘のお弁当作りをやめること。
ひとつひとつ家事を手放し、すっきりしていく様子が爽快です。
この、
- 家族に悶々とモヤモヤを抱えていた主婦が、
- 家族に「これとこれは自分でやって」と言ったら
- 案外やってくれたという流れ
垣谷さんの他の著書でも出てきました。
一見簡単そうに見えるのですが、実際はなかなかできません。
一家の主婦が体調を崩して入院するかと、旅行に行くとかして、止むを得ず他の家族で回さなければならない状況に陥ったりしなければ、ズルズルと主婦が家事をやり続けてしまうのが実情なのではないでしょうか。
自分のため、そして何より家族に自立してもらうために、少しずつでも家事を手放したいなと思いました。
18歳の女子大生のケース
次のケースは家族生まれのお嬢様、（ただし貧乏な）女子大生が主人公。
このケースでは、主人公が一生懸命になれる何か、かぼちゃパイ作りに没頭する過程が読んでいて、心地良かったです。
何か、それこそ寝食を忘れるぐらい夢中になれるものがあって、その過程で自然に痩せていくというのはいいなと思いました。
きっと夢中になれるものを見つけて、小菊ちゃんはビフォーアフターでかなり美しくなったのではないでしょうか。
32歳のサラリーマンのケース
このケースを読んでいて、恐ろしいなと思ったのは32歳のサラリーマン知也が、成長するにつれて、実家の横暴な父親にどんどん似てくるというところ。
家族間で男女が平等でないということは、夫婦間の問題にとどまらず、子供にまで影響し、刷り込まれ、だから、フェミニズムの考えが数10年前に生まれたとしても、それが本当に浸透するには何世代もかかるんだろうな。と思いました。
10歳の小学生、悠太のケース
最後のお話はシングルマザーとその子ども・悠太くんのケース。
聡明でお母さん想いの小学生、だけど、孤独な小学生悠太は、
毎晩1人でカップラーメンやお菓子を食べ、結果、太ってしまいます。
悠太が、
近所に友人を見つけ、
自分で料理できるようになり、
犬の散歩のアルバイトをし、
絶縁状態だったおじいちゃんやおばあちゃんとも関係を深め……
大庭小萬里との出会いをきっかけに、乾いた地が水を吸うようにどんどん成長していく様子が心地よかったです。
悠太のように、少しの手助けを必要としている子どもたちに何かできることはないかと考えられます。
おすすめ度★★★★★
垣谷さんの小説、ストーリーのある自己啓発書として、いつも楽しんでいます。
具体的な考え方、アイデアを実際に生活に取り入れてみようと思えるところがあります。
また、社会問題がタイムリーに反映されていて、考えさせられます。
永続的なダイエットにあたっては、まず心の贅肉を落とす必要がある、何かもっと根本的な問題を解決する必要があるというのは納得です。
ダイエットを主目的にするのではなくて、その人の人生や生活の中にかかわりのある問題を見つけ、そちらを解決する過程の副産物として、ダイエットの成果が得られるというやり方、結局はこれが一番正当なダイエットなのかもしれません。
