垣谷美雨さんの「ニュータウンは黄昏て」を読みました。
内容・あらすじ(「BOOK」データベースより)
バブル崩壊前夜、4LDKの分譲団地を購入した織部家。
都心から1時間、広大な敷地には緑があふれ、「ニュータウン」と持て囃されたが、築30年を過ぎ、母の頼子は理事会で建替え問題に直面。
が、議論は住民エゴの衝突で紛糾、娘の琴里は資産家の息子と出会い、一家は泥沼からの脱出を夢見る…。
感想
定年までのローンを組んで家を買う。それが理想とされるのは社会問題
社会派エンターテインメント、そんな言葉がぴったりの本。
広告におどらされて、家を買った人が、給与減、経年劣化、意外と遠い都心と、購入時には見えていなかった問題に、現実の生活とのギャップに苦しむ様子が描かれています。
そういう問題って、買うときに全部見えるわけがないから、どんな家を買ったとしても間違いなく何らかの後悔はある。
だから、家は買わずに、引っ越しできる余地を持っておくほうが正解なのかもしれないと思いました。
頼子の大逆転
旦那の頼りにならなさにはにイラッとします。
小説を読むという客観的な立場からしみじみ思うに、このシーンは日本の多くの家庭のあるあるなんですね。
多くの主婦が共感イライラしそうな家庭内のシーンがいつも目に浮かぶように描かれています。
家庭だけをマネジメントしていた頼子は本当はできる女性。
最後は市議に立候補して市議会議員に。意外性のある逆転ラストでした。
琴里と友人たちの不思議な関係
資産家だけど、難のある男を押し付け合う琴里と友人たち。
彼女たちの関係に、女友達は、そこまで打算的になれるかな? とちょっと共感・想像できず。
最後にその男性を引き取る女友達の割り切りと目的の明快さが、潔く却ってすがすがしいです。
おすすめ度 ★★★★
人は家という大きな買い物をする前に、家を買ってからの生活をあらんかぎり想像すると思います。
通勤は〇分で、買い物はこのスーパーで、実家へはちょっと遠いけど……。
それでも想定外の問題は必ず発生するもの。
その現実の一例をありありと感じさせてくれる小説。
分譲住宅を買う前に読んでおくべき、実用書兼社会派エンターテイメント。