垣谷美雨さんの「70歳死亡法案可決」を読みました。
内容
高齢者が国民の三割を超え、破綻寸前の日本政府は「七十歳死亡法案」を強行採決。施行まで二年、宝田東洋子は喜びを噛み締めていた。我侭放題の義母の介護に追われた十五年間。能天気な夫、引きこもりの息子、無関心な娘とみな勝手ばかり。やっとお義母さんが死んでくれる。東洋子の心に黒いさざ波が立ち始めて…。すぐそこに迫る現実を描く衝撃作!(「BOOK」データベースより)
感想
主人公の主婦がキレて、家を出るところ、スカッとする
夫に義母の介護を押し付けられ、こどもは成人して1度は就職したのに引きこもりになって、自分はパートをしてていて、、、
何もかも押し付けられていた主人公の主婦東洋子がキレて家を出るところが良いです。
主婦ならだれもが一度がそうしてみたいと妄想したことがあるのではないでしょうか。
(著者もこのシーンが書いてみたかったのかもしれません。)
その後の、東洋子が出て行ってしまったあとの家庭は、少々混乱・困惑しつつも、意外とうまく回りだします。
ここは、案外そうかもしれないと、リアルな気もします。
「70歳死亡法案可決」というタイトルの軽さ・おふざけ感に反し、男女不平等のリアルが描かれた本
垣谷さんは他の著作でも、日本社会の女性の生きにくさに対する怒りを描いています。
垣谷さんの女性はもちろん、1度でも社会に出たことのある女性は、多かれ少なかれ、このような思いを抱いているのではないでしょうか。
そして、東洋子と同様家庭内のことを一心に抱えた主婦のモヤモヤ。
男女平等とはいっても実際はそうではないことをリアルに体感した女性に届く本です。
おすすめ度 ★★★★
タイトルの法案名のありえなさに、軽い感じを受けてしまったのですが、実は本書の醍醐味はこの法案の現実性ではありません。
登場する登場人物の生活環境や気持ちはリアル。
家庭も何もかも捨てて、1人になりたい。
ふと、そんな思いがよぎった主婦の方におすすめです。
垣谷美雨さんの本はいつも上向きハッピーエンドで安心します。