どんぐり君とおにぎり君のママの読書日記

アラフォー、2男の母のブックレビューです。読んだ本の簡単な内容・あらすじ・感想をメモしてます。

椰月美智子さんの「ダリアの笑顔」を読みました。~どこにでもいそうな、ただひとつの家族の日常をつづるオムニバス。

 

椰月美智子さんの「ダリアの笑顔」を読みました。

 

ダリアの笑顔 (光文社文庫)

ダリアの笑顔 (光文社文庫)

 

 内容・あらすじ

「綿貫さんち」は四人家族。「明るく笑うもう一人の自分」を空想する長女・真美。主婦業と仕事をこなしながら、揺れる40代を惑う母・春子。転校生の女子に投手の座を奪われそうな長男・健介。経理課係長の仕事に疲れ、うつ病を心配する父・明弘。どこにでもいそうな家族が、悩みを抱えながらお互いを支え合う日常を、それぞれの視点から描いた小さな宝石のような物語。(Amazon内容紹介より)

感想

どこにでもいそうな家族の話はどこにでもいそうな女の子の話から

長女の真美は少し自己肯定感が低めの女の子。
ダリアの花のように、裏表無く、屈託なく100%の笑顔をつくれる女の子に、ちょっと羨ましいものを感じています。
「ダリアの笑顔」という言葉、100%の笑顔という概念を見事に表しています。
そして、その言葉には100%の笑顔を羨ましく感じる気持ちが入り混じり、、、とてもうまいタイトルだと思いました。

どこにでもいそうな4人家族のオムニバス。
自信がなさげな女の子が主人公の話から入るところに、共感を感じます。
真美は自分が赤ちゃんのころに母親がつけた育児日記を見つけ、それを読むことで、自分がとても大切にされてきたことを知ります。
そして真美は変わっていきます。

42歳。2人の子がいる自分と、2回離婚して20歳の子どもがいる同級生と、体外受精に挑む同級生と。

子供を産むという観点で考えたとき、40歳には実にさまざまなフェイズの人がいます。
主人公の春子は、中学生の女の子(真美)1人と小学生の男の子1人の子持ち。
ごく平均的な家庭。
一見多数派だけど、もちろん何の問題もない訳ではありません。
仕事をして、家事をして、子供が熱出したら休みをとり、家庭の面倒をみて。
著者の母親描写は、いつも母の共感を誘います。
春子が一人で外のベンチでハーゲンダッツを食べるのを生きがいにしているところに共感を覚えます。
仕事の時間でも、家族の時間でもない、至福のひと時。
そうそう、主婦には1人になれる時間と場所は案外ないものですよね。
春子は偶然から、様々な人生を生きる同級生に再会し、自分が家族を持つ幸せを再確認します。
同級生との対比で、自分が持っているものに気づく、青い鳥物語。

男たちの物語はどこかお気楽

長男健介の物語と父・明弘の物語はどこかお気楽。
健介は「かわいい弟」として愛されてきただけあって、卑屈なところや暗いところを感じさせない素直さがあります。
転校性の女の子にピッチャーの座を奪われそうになっても、今度キャッチボールしようぜと言える感じ。
下の子&男の子ならではの、愛すべき感を感じました。

父・明弘は、どこにでもいそうな具合が絶妙。
家族に対しても、会社に対しても、何となく責任感なく、積極的にかかわろうという主体性が希薄な感じがリアルです。
最終話は、家庭でも、会社でも、うまく自分の居場所が見つけられていない感じのお父さんが、インラインスケートのサークルに入り、新たな場をみつけ、成長するお話でした。

おすすめ度★★★★

どこにでもいそうな家族という設定なので、容易に共感でき、感情移入でき、1人1人が得る気づきや成長がまた、リアルだと感じられる作品でした。

著者・椰月美智子さんは日常のありそうな出来事を通じて、小さな成長や気づきを通して読者の共感を呼ぶのがとても上手な作者さんだと思いました。

文章も引っかかるところがなく読みやすく、嫌のところのない小説。 

ダリアの笑顔 (光文社文庫)

ダリアの笑顔 (光文社文庫)