森絵都さんの「DIVE!」を読みました。
内容・あらすじ
高さ10メートルの飛込み台から時速60キロでダイブして、わずか1.4秒の空中演技の正確さと美しさを競う飛込み競技。その一瞬に魅了された少年たちの通う弱小ダイビングクラブ存続の条件は、なんとオリンピック出場だった!女コーチのやり方に戸惑い反発しながらも、今、平凡な少年のすべてをかけた、青春の熱い戦いが始まる―。大人たちのおしつけを越えて、自分らしくあるために、飛べ。（Amazon内容紹介より）
恵まれた動体視力、ダイヤモンドの目を持つ坂井知季。
サラブレッドの天才、富士谷要一。
幻のダイバーを祖父に持つ、青森から出てきた沖津飛沫。
3人の天才中高生と彼らのクラブの仲間、彼らの家族や恋人、そしてコーチ、果ては日本水泳連盟の会長が登場し、それぞれが、オリンピックをかけて、自分の道を進む姿が描かれた作品。
感想
前半はすくすく成長する友季、後半はようやく本性の見えてくる要一に目線が印象に
「飛び込み」という一般の人にはあまり知られていないスポーツを取り上げ、
シドニーオリンピックの出場権を得られなければ存続が危ぶまれているクラブを舞台に、
そこで活躍する中高生の選手を中心に描かれた作品。
元々全国高校生大会で優勝を目指すレベルの要一を筆頭にするかなり強いクラブであったところ、そこにクラブ創設者の孫娘である夏陽子がコーチとして来てからクラブは一転します。
夏陽子は、要一はもちろん、知季の才能を見抜き、本気でオリンピックを目指すことを提言、そのためのコーチングを実践し始めます。
夏陽子という爆弾の投入に答え、選手たちにも変化が見られます。
まず、初めに変化するのが知季。夏陽子に言い渡されたきつい自主トレをはじめ、精神的にも成長していきます。
面白くないのは期待をかけられなかった選手たち。
知季と彼らとの間には溝ができていきます。
そして、生活の中で一番の優先順位を飛び込みにした知季のもとから、ガールフレンドは意外な人のところへ去ります。
ガールフレンドに去られ、飛び込み1本に焦点が定まってきた友牙、さらなる成長を遂げます。
そんな中、これまでクラブのリーダーであり、優等生であり続けた要一に影がさします。
クラブのリーダーとして、こうでなければならない姿にとらわれていた要一が、はじめて勝手な行動、自分のための行動をとりはじめます。
この友季成長と、要一の成長が印象に残りました。
全ての原動力のきっかけとなったコーチ・夏陽子の熱さが心地よい
青森からでてきた飛沫、オリンピックにはてがとどかないレイジ。
登場人物の誰か1人が欠けていたとしても、クラブからオリンピック出場選手を出すことはできなかったかもしれません。
特にその貢献度が高いのはコーチの夏陽子でしょう。
彼女の思いが伝染して、クラブに火がついた感がある。振り返ってそう思いました。
まわりの登場人物のキャラクターが濃い
飛沫の恋人、大島コーチ、前原会長などなど、周りの登場人物本作ではあまり紙面を割かれていない登場人物もみな、よく的なキャラクターであり、スピンオフを見たいなと思わせるました。
おすすめ度★★★★★
とても完成度の高いスポ根もの。
その秘密は、各キャラクターの確立度の高さかなと思いました。
みながそれぞれの思いでオリンピックを目指す様子をみていると、全員をオリンピックにださせてあげて！ と思います。
ラストの締めもすてきな作品でした。
漫画・アニメ化、実写映画化はもちろん納得なんですが、舞台化もされているんですねちょっと驚きです。
