どんぐり君とおにぎり君のママの読書日記

アラフォー、2男の母のブックレビューです。読んだ本の簡単な内容・あらすじ・感想をメモしてます。

森絵都さんの「宇宙のみなしご」を読みました。~うらやましいくらい仲の良い兄弟を中心に、屋根に登る遊びで広がった絆。

 

森絵都さんの「宇宙のみなしご」を読みました。

 

宇宙のみなしご (角川文庫)

宇宙のみなしご (角川文庫)

  • 作者:森 絵都
  • 発売日: 2010/06/25
  • メディア: 文庫
 

内容・あらすじ

中学2年生の陽子と1つ歳下の弟リン。
両親が仕事で忙しく、いつも2人で自己流の遊びを生み出してきた。
新しく見つけたとっておきの遊びは、真夜中に近所の家に忍び込んで屋根にのぼること。
リンと同じ陸上部の七瀬さんも加わり、ある夜3人で屋根にいたところ、クラスのいじめられっ子、キオスクにその様子を見られてしまう…。
第33回野間児童文芸新人賞、第42回産経児童出版文化賞ニッポン放送賞受賞の青春物語。(Amazon内容紹介より)

感想

真夜中に近所の家の屋根登る遊びのお話

先日、近所の児童公園で、子供達が砂場の上の屋根に登っていました。
危ないからやめた方がいいよとか声をかけたほうがよいかしら。
ハラハラと迷ってた時は思いつきませんでしたが、後から家に帰って、思い出しました。
そういえば自分も、集合住宅の自転車置き場の屋根に登っていたことを。
落ちたら骨折ぐらいはしたかも知れません。

足がかけられそうな穴の開いたブロックでを見た時に、
「これを登るとしたら、あそこに足をかけて、楽勝だな」。

そうやって、簡単すぎる計算問題を解くように、らすらと自然とその発想がでできたころを、懐かしく思い返しました。
著者は大人なのにどうして、忘れていたその目線を鮮やかに描けるのでしょうか

親が忙しくほとんど家にいないのに。陽子とリンの健全さと仲良しさ

先に帰った方が夕食を作り、一緒にTVを見ながら夕食をとる兄弟。
陽子が夕食を作る日が続けば、りんは素直にごめんねという。
そして、煮物の日は陽子の気分が落ち込んでいることをちゃんと知っている。
仕事で忙しく、ほとんど家にいない両親のもとに育った2人の健全さと仲の良さに憧れます。
早苗おばさんが指摘するように、2人が年子の兄弟であることが、ただそのことが本当によかったのかもしれません。
兄弟であったからこそ、2人でいろんな遊びを生み出してきたことこそが、グレなかった秘密。
そう考えると、健全であり、仲良しであることは表裏一体で、仲良しであるからこそ、健全さを保てたのかもしれません。

本当に仲の良い兄弟という設定はそれだけでなごみます。

キオスクと七瀬さんの勇気

屋根に上れない。
部活に1人で出れない。
キオスクと七瀬さんにはそれぞれ、どうしてもできないことがありました。
それは陽子やリンから見ればたわいのないことであり、なんでできないのかもよく理解できません。
そういう時にいくら周りが説得してなだめても無駄で、あくまで本人が一歩を歩みだすことで前に進むんだな、という感じが伝わる作品でした。
もどかしくも心から応援したい気持ちになりました。

おすすめ度★★★★

屋根に登る遊びが印象的な作品。
冒頭では、ちょっとした遊びの1つかと思っていたら、これが最後まで大きなモチーフでした。

兄弟と、兄弟を中心に、やや内向的な2人とのきずなが広がっていき、キオスクや七瀬さんが主人公ではないところが、またいいのかなと思いました。

他の森絵都さんの作品同様、忘れていた感情を鮮やかに思い出させる作品。

 

宇宙のみなしご (角川文庫)

宇宙のみなしご (角川文庫)

  • 作者:森 絵都
  • 発売日: 2010/06/25
  • メディア: 文庫