どんぐり君とおにぎり君のママの読書日記

アラフォー、2男の母のブックレビューです。読んだ本の簡単な内容・あらすじ・感想をメモしてます。

森絵都さんの「ラン」を読みました。~あの世の家族に会うために走る。世界一後ろ向きなランナー・環22歳の物語。

 

森絵都さんの「ラン」を読みました。 

ラン (角川文庫)

ラン (角川文庫)

  • 作者:森 絵都
  • 発売日: 2012/02/25
  • メディア: 文庫
 

内容・あらすじ

9年前、13歳の時に家族を事故で亡くした環は、ある日、仲良くなった自転車屋さんからもらったロードバイクに乗ったまま、異世界に紛れ込んでしまう。そこには死んだはずの家族が暮らしていた……。(Amazon内容紹介より)

感想

家族が皆死んでしまったみなしご。環22歳の物語

13歳の時に父と母と弟を事故で亡くし、その後引き取ってくれたおばさんをがんで亡くし。
環の人生には死が付きまとっていました。
そんな環は、自転車の修理をしてもらううちに紺野さんと知合います。
紺野さんもまた、奥さんと息子さんを亡くした人でした。
初めはぽつぽつと、次第に私的な会話をしていくうちに2人は仲良くなります。
この、同じ傷を抱えた2人の交流、2人が癒されていくシーンにいいな、と思うのもつかの間、紺野さんの飼い猫コヨミが亡くなります。
紺野さんは実家の山形に帰ることを決め、環はまた、心を許せる相手を失います。
紺野さんは環に1台の自転車を残します。
その自転車は環をあの世に導く自転車でした。

ファンタジー的展開

環は自転車に乗ってあの世に生き、別れたはずの家族やおばさんに再会します。
突然のファンタジー的展開。
あの世への行き来のルールが結構明確に決まっているところや、そのルールがごく普通のものとして受け入れられていく点がちょっと面白いです。
あの世の住人たちに、ルールブックをだされて、「これはこういうものだから」と説明されると、読んでいる側としては、ああそうなんだ、となぜか納得。
この点、著者の別の作品、「カラフル」に似ています。

ランニングサークルのメンバーにまつわる謎

環は「自分の足であの世に行くため」という極めて後ろ向きな目標で走り始めます。
そして、環は、とある何人ぐサークルに入り、現実の世界の人間と交流を深めていきます。
サークルのリーダーであるドコロさん、大島君、環のライバル真知さん、などなど、サークルメンバーはみなひとくせある人たちで、8人もいるのに、名前とその性格が、労せず頭に入ってきます。
わざと雑多なメンバーを集めたと、メンバー自身が自認するように、メンバーは年齢・性別がそれぞれ異なり、体形(デブ)、年齢(還暦)、職業(水商売)等の分かりやすい特徴を持っているからでしょう。
メンバーの人選が見事です。
そして、彼ら1人ひとりが何かしらのバックグラウンドを持っていて、そもそもなぜ彼らはこのサークルに入ったのか、環はなぜこのサークルにスカウトされたのか、そして、ドコロさんはなぜこのサークルを立ち上げたのか、その謎の答えが、読み進めるにつれて明らかになっていきます。

敵である真知さんが、実は陰で環をかばっていた展開、王道だけどやはり好きです。

え-っ! ここで終わるの!?

小説のラストは余韻を残す方が良い。
そう聞いたことはありますが、物語はすごく良いところで終わります。
もうちょっと読みたかったな……
つまり、もっともっと先が読みたいと思わせるぐらい引き込まれました。

おすすめ度★★★★★

森絵都さんの小説はいつも、キャラクターがすみずみまで魅力的です。
本作も、主人公、主要メンバー、脇役に至るまで、丁寧に描かれていると感じました。
願わくば、もう少し続きが読みたかった……
と強く思うほど面白い展開でした。

森絵都さんの長編は、まあまあ読破してきたかな。

ラン (角川文庫)

ラン (角川文庫)

  • 作者:森 絵都
  • 発売日: 2012/02/25
  • メディア: 文庫