どんぐり君とおにぎり君のママの読書日記

アラフォー、2男の母のブックレビューです。読んだ本の簡単な内容・あらすじ・感想をメモしてます。

森絵都さんの「いつかパラソルの下で」を読みました。~お父さんの死からはじまる、お父さんの半生めぐり。

 

森絵都さんの「いつかパラソルの下で」を読みました。 

いつかパラソルの下で (角川文庫 も 16-5)

いつかパラソルの下で (角川文庫 も 16-5)

  • 作者:森 絵都
  • 発売日: 2008/04/25
  • メディア: 文庫
 

内容・あらすじ

厳格な父の教育に嫌気がさし、成人を機に家を飛び出していた柏原野々。その父も亡くなり、四十九日の法要を迎えようとしていたころ、生前の父と関係があったという女性から連絡が入り……。(Amazon内容紹介より)

感想

気楽に暮らす野々

主人公の野々は、20代。
アルバイトを転々とし、恋人の達朗と同棲し、日々自由に暮らしています。
しかし、この今のお気楽な暮らしは20年間厳格な父と共に暮らしてきたことの反動でした。
野々の父は少し異常とも思えるぐらいに厳格な人でした。
お兄ちゃんと野々と妹の三兄弟は、ことあるごとに色々なものを取り上げられ、厳しい決まりのもとに育てられました。

お父さんの死からはじまる

そんなお父さんが事故死し、四十九日の法要を迎える頃、物語は動き出します。
お母さんの元にお父さんの会社のとある女性から連絡が来ました。
呼び出された喫茶店で話してみれば、彼女はお父さんを振ったことがあるとのこと。
頭がおかしい女性なのではないかと、母と野々は一笑に付しますが、その後野々は生前の父が気になり、再度父の会社に連絡してみます。
すると、別の女性が、今度こそ本当に父と関係は持っていたことが明らかになりました。

お父さんの人生

その後、お母さんが元気をなくしたのをきっかけに、野々は兄と妹に、父の浮気について初めて話します。
三兄弟はお父さんが亡くなって初めて、お父さんを1人の人間としてみはじめます。
彼は本当はどのような人だったのでしょうか。
野々はまた、自分自身のことも考え始めます。
厳格な父から逃れたくて、早々に実家を出たものの、自分はいまだにお父さんの影響を色濃く受けていて、そこからは逃れられてはいないのではないかと。

恐らくは全ての人が、家族からの何らかの呪縛を受けているという所しみじみ共感です。

その後、三兄弟はお父さんの友人に会い、生前のお父さんの話を聞いたり、お父さんの実家である佐渡島を訪れたりします。

お父さんの呪縛から解き放たれる

本書の主人公は野々ですが、中心になるのはお父さんの人生。
お父さんはきっとこんな気持ちで島をでたんだろうね。
お父さんにとって会社の女性との浮気はこんな気持ちだったんだろうね。
お父さんの人生を振り返る過程で、野々、お兄ちゃん、妹はそれぞれお父さんの呪縛から解放され、お父さんのせいにしない、自分の人生を歩み始めます。

3兄弟がリアル

お父さんの言うことを決めたがって早々に家を出た長男と長女。
反して、お父さんのいうことを一番よく聞き、家に残った二女。
同じ両親のもとに育てられた3兄弟の性格が、とてもリーズナブルなものに感じられました。
3人の会話が、3人のバックグラウンドから発せられて生き生きとしています。
森絵都さんの小説の、ここが好きです。

すごく特異ではないけど、ユニークな人生

お父さんの人生は、何かで日本一になるとか、犯罪を犯すとか、飛び抜けて大きな事件はなかったけれど、ユニークで、それなりな非日常的なイベントのある人生でした。
普通だけど、それなりな非日常的な事故のある人生のリアルさが、共感をよびます。

おすすめ度★★★★

適当な感じのお兄ちゃん、妹の怒り。

3兄弟のセリフが、すごく性格がよく表れているのという感じがしてリアルでした。

だから、感情移入しやすいんだろうなぁと思います。

最後が上向きな感じで終わるのも良かったです。

 

いつかパラソルの下で (角川文庫 も 16-5)

いつかパラソルの下で (角川文庫 も 16-5)

  • 作者:森 絵都
  • 発売日: 2008/04/25
  • メディア: 文庫