どんぐり君とおにぎり君のママの読書日記

アラフォー、2男の母のブックレビューです。読んだ本の簡単な内容・あらすじ・感想をメモしてます。

安宅和人さんの「シン・二ホン」を読みました。~現実の直視にがっかりし、でも日本の明るい側面も書かれ、風の谷の構想にインスパイアされる

安宅和人さんの「シン・二ホン」を読みました。

概要

現在の世の中の変化をどう見たらいいのか?日本の現状をどう考えるべきか?企業はどうしたらいいのか?すでに大人の人はこれからどうサバイバルしていけばいいのか?この変化の時代、子どもにはどんな経験を与え、育てればいいのか?若者は、このAIネイティブ時代をどう捉え、生きのびていけばいいのか?国としてのAI戦略、知財戦略はどうあるべきか?AI時代の人材育成は何が課題で、どう考えたらいいのか?日本の大学など高等教育機関、研究機関の現状をどう考えたらいいのか?『イシューからはじめよ』から9年―。ファクトベースの現状分析と新たなる時代の展望。(Amazon内容紹介より)

内容のメモと感想

大変盛りだくさんの内容で、一読でその全てを受け取ることはできなかったのですが、今回の読書で印象に残った点をメモしておきます。

チャームが大事

今後どのような人材が必要かという話で印象に残ったのは「チャーム」が大事だいうお話。
人間社会で成功するかどうか、面白いことを仕掛けられるかどうかは、運と根気と勘と、そしてその人の魅力、すなわちチャーム(charm)にかかっているとのこと。
チャーミングでない人は、人として愛され、人から信頼を得て、成功する事は難しい。運すらかわる。
全くその通りだと思います。
しかし、「成功には運も必要」。そんな文言は目にしたことがありますが、「成功にはチャーム」が必要と明言したものはあまり見ない気がします。
チャームとは、人としての魅力のことなので、なかなか言葉にするのは難しいのですが、具体的には、明るさや前向きさ・心の強さ・信じられる人である・包容力・その人らしさ・エネルギー・提案力・笑顔などなどといったところが挙げられています。
少なくとも日本では、チャームが大事という点は、あんまり積極的に教えていられないように思います。
著者は、チャームが人生において大切なものであることは、幼少期から育てられる側も、育てる側も認識すべきとのこと、指摘しています。

科学技術や歴史の出来事をストーリー的に教える

日本の教科書は科学技術の成果である式や、歴史の結果だけを抽出した教育をしがちだという指摘がありました。
海外の教科書は、自然法則の発見の過程を、ストーリー的にまとめた教科書になっているとのこと。だから結構分厚い教科書とのことです。
歴史の偉人たちも、自分たちに身近な存在であったという風に感じられるような教えがよいという点納得しました。
確かにそのような教科書なら記憶に残るし、自分もやってみようと思えるかもしれません。
サイエンスの本質とは、自然法則を他に応用することではなく、各部問の概念を理解すること、その関係性を理解することとの指摘、日本では、理学<工学と感じました。

若い人たちと科学技術への投資について

日本人の生産性はドイツ人の生産性のおよそ3分の2という話に愕然としました。
ICTとか昨今急速に発展した分野だけではなく、すべて全ての技術分野において生産性が低いとのこと。
逆に各国に追いつくことだけで成長が望めるというのは明るい側面ではあるとのことです。
元々日本はキャッチアップやすべてをご破算にしてやり直す(例:伊勢神宮)が得意なのでまだまだチャンスはある! 
そのためには圧倒的に少ない科学技術分野への投資をもっと増やすべきであり、たとえは、学振をとったphDがまともな暮らしができないようでは話にならない。
残念な現実を直視し、しかし明るい側面も書かれています。

気づきと新しい知識は違う

気づきとは、自分の中にある何らかの知識や理解が異なる何かと繋がること、これは情報館の化学反応であって、知らなかったことを知るということとはちがう。
自分の中で知識と知識が繋がる。スティーブジョブズがカリグラフィーと美しいフォントを繋げたというセレンディピティの話、AI時代の人間力の話とも繋がります。

風の谷構想

やはり一番印象に残ったのは風の谷の構想です。
風の谷は、風の谷の集落のイメージのコミュニティで、現代の都市集中型の代替として、人間のテクノロジーを駆使して、自然の中に自然とともに人間らしく豊かな暮らしを実現するための集落。
読んでいて純粋に、風の谷に住んでみたいなと思いました。
しかし、著者も指摘してるように結構課題が多そうです。
一番大きな問題が、インフラ(道・配電・水・ゴミ・土木的な問題、エネルギー)。
加えて、ヘルスケア、災害対策、教育など。
この構想がもし現実化するとしても、現実化までにはいくつかのステップを踏む必要があり、数10年以上がかかるとのこと。
特に子供達が住める様になるのは最後のステップで、つまり、かなりの時間を要することになりそうです。
課題は多いですが、それを上回るワクワク、インスパイアリングな感じ、を感じました。
我が家の子供たちが子供のうちに、「谷」的なところに数日、数週間単位で訪れるをやってみたいな、と思いました。

おすすめ度★★★★★

読んでおくべき一冊と感じました。
一読では読み切れず、観点を絞って再読してみたいと思います。