どんぐり君とおにぎり君のママの読書日記

アラフォー、2男の母のブックレビューです。読んだ本の簡単な内容・あらすじ・感想をメモしてます。

平野啓一郎さんの「決壊」を読みました。

平野啓一郎さんの「決壊」を読みました。 

決壊(上) (新潮文庫)

決壊(上) (新潮文庫)

 
決壊(下) (新潮文庫)

決壊(下) (新潮文庫)

 

あらすじ・内容

地方都市で妻子と平凡な暮らしを送るサラリーマン沢野良介は、東京に住むエリート公務員の兄・崇と、自分の人生への違和感をネットの匿名日記に残していた。一方、いじめに苦しむ中学生・北崎友哉は、殺人の夢想を孤独に膨らませていた。ある日、良介は忽然と姿を消した。無関係だった二つの人生に、何かが起こっている。許されぬ罪を巡り息づまる物語が幕を開く。衝撃の長編小説。(Amazon内容紹介より)

感想

崇の何が、いけないのだろう

正体をみせろ。
殺人の容疑をかけられて、尋問される崇。
尋問が続き、見舞いに来てられた紗希に、崇は自らの過去の思いを告白します。
崇は、「分人を認識している」こと。
そして、「紗希ちゃんの前の俺は完全にオーダーメイドだよ」
一見それはそれで、素敵なことのようにも思えるけど、崇は分人と文人との間のギャップの大きさが、どこか苦しそうです。
そして、崇は各分人の間の一致が大きい人、良介に、どこか憧れをいだいているように感じます。
崇の人格を分解してみると、分人が人より多くて、その構成比率が細々と均一なのかもしれません。
大きくしたい分人が見つからなかったことが崇の問題で、まわりの人々はその人間味のなさ、人格の解離みたいものに、違和感や不信感を、実は敏感に感じとっていたのかもしれません。

千寿とその夫と「合わない」の理由のリアル

失敗したおかずをアレンジしたらうまくいって自分としてはヤッター思っていたのに、夫からはノーリアクション。
自分の夫は運命の人ではないかもしれないと千寿が回想するシーンです。
一見些細なことなんだけど、日常の些細なことに対する感情が共有できないことには寂しさを感じると思った。
そしてそれが積み重なったら。いずれこれも決壊する日がくるのかもしれません。
もし、些細なことに同じ感情を抱く人がいたら、その人とのほうが合うのでは、と感じる瞬間があると思う。
幻想かもしれませんが、その極端な形が、マチネのはじまりの、洋子と蒔野の会話なのではないかと感じました。

 

マチネの終わりに(文庫版) (コルク)

マチネの終わりに(文庫版) (コルク)

 

おすすめ度 ★★★

犯罪の残酷さと悪魔の章に、少々目をそむけたくなってしまって、やや飛ばし気味に読んでしまった。このあたり理解不十分。そういう意味で、再読してみたい。
崇と、その周辺の登場人物の章は、共感する部分や、考える部分が多かった。
ラストは、これしかないかな、という気がした。

 

決壊(上) (新潮文庫)

決壊(上) (新潮文庫)

 
決壊(下) (新潮文庫)

決壊(下) (新潮文庫)