住野よるさんの「また、同じ夢を見ていた」を読みました。
内容・あらすじ
250万部を超える大ベストセラー青春小説「君の膵臓をたべたい」。その著者、住野よるの第二作目が、待望の文庫化。友達のいない少女、リストカットを繰り返す女子高生、アバズレと罵られる女性、一人静かに余生をおくる老女。彼女たちの“幸せ”は、どこにあるのか。「やり直したい」ことがある、“今”がうまくいかない全ての人たちに贈る物語。(Amazon内容紹介より)
主人公は小学生の女の子、奈ノ花。
本が好きな頭の良い女の子ですが、クラスの中で、家庭の中で、人間関係に不器用なところがあります。
でも、そんな彼女には年上の素敵な友人がいます。
高校生の南さん、大人の女性のアバズレさん、そしておばあちゃん。
3人は奈ノ花のよき相談相手。
学校でちょっと困ったことがあった時、奈ノ花はまず頼りになる担任のひとみ先生の元に行きます。
そして、よき相談相手のもとに、相談しに行きます。
感想
良きカウンセラーの消失と「夢」というタイトルの謎
高校生の南さん、大人の女性のアバズレさん、そしておばあちゃん。
奈ノ花には、頼りになる相談者が3人もいます。
この物語は読み始めた時は、
多少家庭内や学校でうまくいかないことがあったって、
この素敵な3人の相談者たちがいればそれで十分じゃないかと思いました。
しかし、この素敵な3人の相談者たちが、いつまでも奈ノ花と共にいるものではないという予感を感じさせます。
最初に消えるのは南さん。
そして、南さんという1人の人間が消えることを奈ノ花はあまりにあっさり受け入れます。
ここで、読者はこの物語に夢が混じっていることをはっきりと意識します。
「やり直したい」ことがある。3者はその思いの権現。
物語を最後まで読んだ方はおわかりでしょうが、3人の頼りになる相談者たちは、奈ノ花の未来の姿でした。
南さんは、お母さん、お父さんに謝れなかった、奈ノ花の未来。
アバズレさんはクラスメイトと仲直りできなかった、奈ノ花の未来。
そしておばあちゃんは桐生くんと仲直りできなかった、奈ノ花の未来とのこと。
(一読ではわからず、ブログなど見ました。)
なんとしっかりした構成の物語でしょう。
選択に正解はあるのか
1つ感じたのは、両親に謝れなかった南さん、クラスメイトと仲直りできなかったアバズレさん、桐生くんと仲直りできなかったおばあちゃんのその選択を認め、それぞれの人生を歩んだ感を感じたかったなと思いました。
いろんな選択肢の人生を肯定してほしかったかなと。あまいでしょうか。
おすすめ度★★★★
一気に読みました。
住野よるさんの本を読むのは、「君の膵臓を食べたい」、「夜のばけもの」に続き三作目。
本作は「夜のばけもの」同様、少し謎を含んだ書き方がされた本でした。
住野よるさんの作品に含まれる謎は、犯人やトリックの謎を含むミステリーとは一味違い、「解釈」の謎です。
ただ、そこに1つのリーズナブルな回答が準備されているという点では、本書もミステリーの要素があると言えるのではないでしょうか。
解釈の謎を積極的に提示する。
新しいスタイルだなと感じました。
住野作品は現在6冊あるとのこと。
残り3冊読むのが楽しみです。