レイチェル・ギーザさんの「ボーイズ 男の子はなぜ「男らしく」育つのか」を読みました。
概要
女らしさがつくられたものなら、男らしさは生まれつき?
男性、女性、すべての人のために。
フェミニズムが台頭する今だからこそ、「男らしさ」の意味も再考するとき。
自身も男の子の親である著者のギーザは、教育者や心理学者などの専門家、子どもを持つ親、そして男の子たち自身へのインタビューを含む広範なリサーチをもとに、マスキュリニティと男の子たちをとりまく問題を詳細に検討。
ジャーナリスト且つ等身大の母親が、現代のリアルな「男の子」に切り込む、明晰で爽快なノンフィクション。
〈目次〉
はじめに――今、男の子の育て方に何が起こっているのか?
1章 男の子らしさという名の牢獄――つくられるマスキュリニティ
2章 本当に「生まれつき」?――ジェンダーと性別の科学を考える
3章 男の子と友情――親密性の希求とホモフォビアの壁
4章 ボーイ・クライシス――学校教育から本当に取り残されているのは誰?
5章 「男」になれ――スポーツはいかにして男の子をつくりあげるのか
6章 ゲームボーイズ――男の子とポピュラーカルチャー
7章 男らしさの仮面を脱いで――男の子とセックスについて話すには
8章 終わりに――ボーイ・ボックスの外へ
(Amazon内容紹介より)
内容のメモと感想
いろいろな生き方が認められつつある女性に対し、男性は?
「女性学」「フェミニズム」がささやかれはじめ、もはや何十年も月日が過ぎています。
女の子が、その成長過程で、仕事をあきらめ家庭に入るべきとか、社会に出てからリーダーシップは取るのは難しいとか、そういう色メガネを身につけていってしまうことが問題視されています。
このようなジェンダーステレオタイプが、女の子の自尊心を行動にや進路に与える影響については、研究やメディアでふんだんに取り上げられています。
さらには、女の子にピンクの洋服を与えてよいのか。
バービー人形を与えてよいのか。
もっと小さな頃から、偏った育て方がされているのではないかと疑問が投げかけるようになっています。
一方の男の子は?
男の子のジェンダーステレオタイプはその影響についてはあまり配慮が向けられてきたとは言えません。
これは、性差別的社会において一般に男の子は女の子よりも高いステータスにあるためとのこと。
本書は、フェミニズムが台頭する世の中、男の子の育て方を変えなくていいのか? ここをついた本です。
性別のステレオタイプに加えて、人種のステレオタイプも大きい
アジア系は真面目でオタクっぽいなどなど、人種による色眼鏡とその人種ステレオタイプが自尊心や進路選択等に及ぼす影響について、書かれています。
ここはずっと日本にいるとなかなか体感できないのですが、性別によるステレオタイプ、人種によるステレオタイプ、これらのミックスステレオタイプの存在、勉強になります。
そのステレオタイプにとらわれず、個々が認められるようになるのが理想であることは理解できますが、例えば日本人女性の私は、日本人という傾向は持っているし、女性という傾向と思うので、日本人女性というステレオタイプに当てはめた方が理解が早いと思ってしまうような場合もあるかもしれません。
各特性がステレオタイプではなく、個々を理解した上でのアイデンティティの肯定。言うは簡単行うは難しとかんじました。
男の子には身近なロールモデルがいない
今や小学校の先生はほとんど女性が女性。女の子たちは勉強が好きで、女の先生に気に入られがち。
でも、ロールモデルになるような先生がいれば、男の子達も今よりも良いか、結果を出せる可能性があるかもしれない。
そのデータが印象に残りました。
ノースカロライナ州の研究によれば、黒人の先生がひとりいるだけで、貧困層の黒人の少年達の退学率が大幅に下がるとのこと。
このようなデータを受けて、カリフォルニア州のオークランド統一学区では「男性としての発展プログラム」として3年生から12年生までのアフリカ系アメリカ人の男子生徒を対象に、歴史・政治・文化に関する一連の選択制のコースが用意されおり、教える先生は全て黒人の先生とされているそうです。
また、トロントではポルトガル系の教員やソーシャルワーカーたちがポルトガル系生徒のために勉強の個人指導などをしてくれるメンターをするグループを作っているとのこと。
自分たちのコミュニティ出身で高校を卒業し進学した大人と出会うことで、アイデンティティと学業についての思い込み(黒人系・移民の退学率の多さ等)をなくそうという狙いだということ。
その他、停学や退学を減らすための瞑想とヨガのプログラムも印象的です。
こどもたちが、学校の先生に限らず、放課後のプログラムや習い事などで身近にロールモデルとなる同性の大人に出会う機会が増えるといいなと思いました。
男女を問わず。
女の子の育て方が男の子の育て方に近づいたのは喜ばしい、でも男の子の育て方が、女の子の育て方に近づくまでは本当の解決にはならない
本書にはホッケーチームのマスキュリニティについても書かれています。
強さを誇る、マスキュリニティが重要視されたホッケーチームも今では少しずつ変わりつつあるとのこと。
体育会系の部活動やチームにおいて、マスキュリニティが重要視されるのは日本も同じですね。
まだまだマスキュリニティが残っているとも感じますが、このような記事をみると希望も湧きます。
著者はマスキュリニティを否定するわけではないと書いています。
マスキュリニティを好まないことが否定されないような社会、男の子の多様性を認める社会であればよいなという考えに共感しました。
永続的な変革のためにはフェミニズムは女の子や女性の生き方を変えるだけにとどまってはならない男の子や男性の生き方も変えなくてはならないのだ
おすすめ度★★★
男の子の親にとって、学ぶことが多い本。
トミカは、プラレールは、本当にその子が好んだものか。おままごとセットを好きな気持ちを同じ強さで肯定してあげられたか。
考えさせられます。