どんぐり君とおにぎり君のママの読書日記

アラフォー、2男の母のブックレビューです。読んだ本の簡単な内容・あらすじ・感想をメモしてます。

住野よるさんの「青くて痛くて脆い」を読みました。~青春時代の痛さをつきつけられる、イタい作品。

住野よるさんの「青くて痛くて脆い」を読みました。

青くて痛くて脆い

青くて痛くて脆い

  • 作者:住野 よる
  • 発売日: 2018/03/02
  • メディア: 単行本
 

内容・あらすじ

人に不用意に近づきすぎないことを信条にしていた大学1年の春、僕は秋好寿乃に出会った。
空気の読めない発言を連発し、周囲から浮いていて、けれど誰よりも純粋だった彼女。秋好の理想と情熱に感化され、僕たちは二人で「モアイ」という秘密結社を結成した。
それから3年。あのとき将来の夢を語り合った秋好はもういない。僕の心には、彼女がついた嘘が棘のように刺さっていた。
 
「僕が、秋好が残した嘘を、本当に変える」
それは僕にとって、世間への叛逆を意味していた――。
 
青春の煌めきと残酷さを痛烈に描ききった、著者渾身の新境地!
(Amazon内容紹介より)

感想

今の秋好不在のまま、現在と過去の回想とか交互に繰り返される構成。

過去に僕と秋好が作った「モアイ」という組織。
もう僕らのものではない「モアイ」を潰そうとする現在と、
過去の秋好が出た時の思い出が交互に繰り返される構成となっています。
過去は失ってしまったよき思い出として描かれており、秋好はもういないように書かれています。
読者としては、
秋好はもう死んでしまったのか? 
(君の膵臓を食べたいとあまりにシチュエーションが近くなってしまうから、それはないか……)
あるいはどこか遠くに行ってしまったのか? 
はたまた何かの病気で入院中なのか? 
等々今の秋好がどうなっているのか、妄想を掻き立てられます。
きっと、ここをあえて伏せたところがこの作品のミソのひとつなのでしょうね。
住野作品の味。

読んでいる間、僕に共感する怖さ

僕と薫介は、「モアイ」に潜入して、「モアイ」をつぶすことができる情報がないか、画策します。
そして、個人情報流出というネタをつかみます。
これは確かに、モアイにダメージを与えることができる。
潰すことができるかもしれない。
しかしここで薫介は「もうやめよう」といいます。
読後冷静になってみると、ここでやめようという判断をした薫介の方が、はるかに健全に感じます。

しかし、恐ろしいことに、読書中は、僕に感情移入しており、やめようといった薫介に対して「えー!! ここまできてやめるの?」と思いました。
ここで僕は現在の秋好を傷つける可能性は、全く考慮していませんでした。
この時点では、現在秋好はいないものとなっていますので、僕が秋好を傷つける可能性を考慮しないのは、読者にとっても自然です。
現在の秋好の状況を伏せて、読者を僕に共感させる。
そのために物語の最後のほうまで秋好の存否は伏せられていたのかなぁ、うまいな、と感じました。

タイトルを体現した作品

しかし、現実には秋好はまだモアイにいるわけで、秋好を傷つけると分かっていて、そこまでやる必要があったでしょうか。
一瞬は、胸がすくかもしれませんが、そのあと、自分のしたことを受け止めることができるでしょうか。
例えば傷を負った相手を目にしたりしたら、後味の悪さを、後悔を噛み締めて生きていくことになるかもしれません。
ここで何かに目をふせ、自分のなにかちっぽけなものをつらぬくために、視野狭窄に陥ってしまうことこそが、青くて、痛くということなのかもしれません。
そして、そのちっぽけな価値観の、過ぎ去ってみればなんともろいこと。
僕のつまらない、でも当時の僕にしてみれば、譲れない意地みたいなものが、青春をややこしくする、痛くて脆いものなのかなと感じました。
青春時代の痛い思い出を思い出させる作品でした。

おすすめ度★★★

読者に青春時代の痛さを思い出させる作品。
大人になった僕がもう一度この青春時代に飛び込んだなら、たとえモアイを辞めたとしても、秋好とはほどほどに仲良くやっていくことができるかもしれない。
でも、当時は青かったからできなかったのですね。それが青春と感じさせる作品。
  

青くて痛くて脆い

青くて痛くて脆い

  • 作者:住野 よる
  • 発売日: 2018/03/02
  • メディア: 単行本