どんぐり君とおにぎり君のママの読書日記

アラフォー、2男の母のブックレビューです。読んだ本の簡単な内容・あらすじ・感想をメモしてます。

凪良ゆうさんの「わたしの美しい庭」を読みました。~40台独身でなくても、ゲイではなくても、うつ病ではなくても。生きづらさに共感し、そんな彼らが自分が好きになるお話。

 

凪良ゆうさんの「わたしの美しい庭」を読みました。

わたしの美しい庭

わたしの美しい庭

 


内容・あらすじ

小学生の百音と統理はふたり暮らし。朝になると同じマンションに住む路有が遊びにきて、三人でご飯を食べる。 百音と統理は血がつながっていない。その生活を“変わっている”という人もいるけれど、日々楽しく過ごしている。 三人が住むマンションの屋上。そこには小さな神社があり、統理が管理をしている。 地元の人からは『屋上神社』とか『縁切りさん』と気安く呼ばれていて、断ち物の神さまが祀られている。 悪癖、気鬱となる悪いご縁、すべてを断ち切ってくれるといい、“いろんなもの”が心に絡んでしまった人がやってくるが――(Amazon内容紹介より)

統理と小学生の百音はふたり暮らしだが、血はつながっていない。朝になると同じマンションに住む路有が遊びにきて、三人でご飯を食べる。その生活を“変わってる”という人もいるけれど、日々楽しく過ごしている。三人が住むマンションの屋上には小さな神社があり、地元の人からは『屋上神社』などと呼ばれている。断ち物の神さまが祀られていて、悪いご縁を断ち切ってくれるといい、“いろんなもの”が心に絡んでしまった人がやってくるが―そこを訪れる“生きづらさ”を抱えた人たちと、「わたし」の物語。

感想

「普通」の幸せな人生とはちょっと外れてしまった人達の物語

普通なんて本当はどこにもないんだけれど、人は社会の普通でなければ、という固定観念にとらわれがち。
本書はそんな「普通」からちょっと外れてしまった人達が主人公の物語。
最初の短編の主人公の桃子は、40にして独身。
しきりに見合いを勧めてくる母がいる家庭の中でも、女子の中ではお局様的存在になってしまった職場でも居づらさを感じています。
次の主人公はゲイの路有。
最後の主人公は30代前半、ゼネコンに勤めながらもうつ病で戦線離脱中の基。
皆それぞれに生きづらさを抱えています。

「ごめん、ずっと愛している」一見きれいな置き手紙を残して去った恋人のずるさを鋭く指摘

ずっと愛しているなんて、お前の罪悪感をごまかすための言い訳だろうが、お前らの良心の呵責はお前の荷物だ。それぐらいしろ自分で持ちやがれ。半分がらんとした部屋で、大昔統里にもらった言葉で自分を守った。 

二つ目の短編はゲイの路有が主人公。
ある日、路有のもとに、過去に路有をふった恋人から手紙が来ます。
路有は未だに自分の心を煩わすようなことをしてくる元恋人に対し苛立ちを感じます。
そもそもその元恋人はぱっと見美しい、しかしその日ひどい手紙を残し路有の元を去った男。
自己保身のために謝った深層心理をつき、そのずるさを適格に指摘したことに胸がすくような思いがしました。

その後、新しい恋に身をゆだねようとする路有。
わずらわしさがあることを知りつつ、億劫さを感じつつ、一歩進む路有の心理にいちいち共感します。

著者の書きぶりのうまさ

凪良ゆうさんの本を読むのは、流浪の月、神様のビオトープ、すみれ荘ファミリアに続き本作で四作目。
その滑らかな書きぶりに毎度惚れ惚れします。
正確に言うと、読んでいる間は自然すぎてほれぼれする間もなく、振り返るとここまで自然に共感させる文章はすごいなと思います。
私は40台独身ではないし、ゲイではないし、うつ病でもないんだけれど、気づけば桃子、路有、基のそれぞれの心情に共感しています。
「わかる」と思わせます。

例えば近所のおばさん達。子供の頃から知っているという気安さがあるのか、家族ですら言わない、いや家族だからこそ踏み込まない部分にズバズバ切り込んでくる。道で顔を合わせる度、お勤めやめたんだってねと挨拶のように声をかけられる。…いいところにお勤めだったのに勿体ないねと気の毒そうな目で見られる。
…おばさん達に悪意はない。ただデリカシーが足りないだけなのだ。ざっくばらんとかおおらかとか言う言葉で自分を肯定していく人間には勝てない。そう皮肉る度、少し前までの自分の傲慢さんを思い出す。俺より長く生きてるのにこんな仕事もできないのかと下請けを怒鳴り散らした。会社の力を自分の力のように勘違いしていた俺はおばさん達より罪深い。

少し長く引用してしまいました。こちらは三つ目の短編基が主人公の話の冒頭。

「おばさん達に悪意はない。ただデリカシーが足りないだけなのだ。ざっくばらんとかおおらかとか言う言葉で自分を肯定していく人間には勝てない。」

言語化がうまい、と思います。

おすすめ度★★★★★

すっかりファンになりました。
滑らかに共感しながら読める、マイノリティーの生きづらさを語った本。
でも、決して暗くはない。彼らの心には健全だと思わせる何かがあるから。

こういう小説に出会えると、新しい小説をたくさん読みたいなと思います。

 

わたしの美しい庭

わたしの美しい庭

 
わたしの美しい庭【無料配信版】

わたしの美しい庭【無料配信版】

  • 作者:凪良ゆう
  • 発売日: 2019/11/22
  • メディア: Kindle版