どんぐり君とおにぎり君のママの読書日記

アラフォー、2男の母のブックレビューです。読んだ本の簡単な内容・あらすじ・感想をメモしてます。

レベッカソルニットさんの「説教したがる男たち」を読みました。~男が女に説教をし、暴力的な事件が多発する現実。女性が地理的にも想像の中でも自由に動き回れる世界を求めて。

 

レベッカソルニットさんの「説教したがる男たち」を読みました。

 

説教したがる男たち

説教したがる男たち

 

概要

相手が女性と見るや、講釈を垂れたがる男たち。そんなオヤジたちがどこにでもいること自体が、女性たちが強いられている沈黙、世界の圧倒的な不公正そのものだ。今や辞書にも載っている「マンスプレイニング(manとexplainの合成語)」を世に広め、#MeTooへと続く大きなうねりを準備するきっかけのひとつとなったソルニットの傑作、待望の邦訳!


女性は日々、戦争を経験している。
どんなに頑張っても、話すこともできず、自分のいうことを聞いてもらおうとすることさえ、ままならない。
ここはお前たちの居場所ではない。
男たちは根拠のない自信過剰で、そう女性を沈黙に追い込む。

ソルニット自身がその著者とも知らず、「今年出た、とても重要な本を知っているかね」と話しかけた男。
彼にそんな態度を取らせている背景には、男女のあいだの、世界の深い裂け目がある。
性暴力やドメスティック・バイオレンスは蔓延し、それでいて、加害者の圧倒的割合が男性であることには触れられない。
女性たちの口をつぐませ、ときに死に追いやる暴力の構造をあばき出し、
想像力と言葉を武器に、立ち上がる勇気を与える希望の書。(Amazon内容紹介より)

内容のメモと感想

男が女に説教をするということと、ジェンダーの関係

著者はディナーの席で、「説教したがる男たち」というエッセイを書こうと思っていると冗談まじりにいうと、友人に「絶対書くべきよ」と言われます。
男に偉そうな態度をとられることについての具体例から出発したエッセイはレイプと殺人といった話題に展開します。

この展開、著者は「説教したがる男たち」というエッセイを書き始める前には想像していなかったとのこと。
暴力やハラスメントは、威嚇、脅迫、暴行レイプや殺人といった厳密なカテゴリーに当てはまるものと考えられがちですが、それはどんどんエスカレートしていくものなのだと著者は言います。
だからこれらの犯罪をここのカテゴリーに押し込めて別々の事例として扱うのではなく、それらがずるずると悪化していく様について語らなくてはいけないとのこと。
本書のタイトルと、本書の主題がここにあります。

性的暴行事件の多さ

アメリカでは報告されているだけでも6.2分に1度レイプが起き、5人に1人の女性がレイプされた経験を持つとのこと。
この統計データだけでも衝撃です。
著者は、もちろん女性による暴力もあるということを断っていますが、最近の研究によれば、女性による暴力が深刻な損害を与えることはそれほど多くはなく、死に至るケースは稀でとのこと。
女性が男性を殺害するのもしばしば正当防衛によるものである一方、親密な関係で起こる暴力によって病院送りか墓場送りにさせる女性は山ほどいて、親密な関係であれ、赤の他人であれ、男性による女性に対する暴力が世界中で猛威を振るっているとのこと。
アメリカで起こる大量殺人の範囲には白人男性が多いという論文があるが、男性であることが暴力的な犯罪行為に及ぶリスク要因となることを複数の研究が示していることには着目されていないと指摘します。

まず、アメリカの暴行事件の多さに暗澹。
(女子供だけで平和な世界を作った方がよいのかとさえ思います。)

結婚の平等

最近になって多くのアメリカ人は「結婚の平等」という言葉を使うようになったとのこと。
この言葉は、元々は同性のカップルが異性のカップルと同等の権限を持つという意味だったが、同様に婚姻関係にあるものは平等だという意味もあるそうです。
伝統的な結婚はそういうものではなくて、西洋の歴史ではおおむね法の下の結婚では、

  • 夫は本質的に所有者であり
  • 妻はその所有物だった

あるいは

  • 夫が持つボスで
  • 女性は召使いか奴隷だった

とのこと。
イギリスの慣習法の解説にも「結婚によって夫と妻は法律上一人の人間になる。つまり女性の存在そのもの、もしくは女性の法律上の存在は、結婚が継続する間は保留となるか少なくとも夫の存在に組み入れられ統合される」と書かれているとのこと。

昨今は形式の上だけでも、男女が平等に扱われようとしていると感じますがその歴史はいかに短いものなのか、女性がの人権が認められていなかった歴史がいかに長いことか。

バージニア・ウルフが求めた女性の解放

作家であるヴァージニア・ウルフが訴える解放は、単に制度の中で男性がしていたことを女性もできるようになるだけではなく、女性が地理的にも想像の中でも自由に動き回るようになること。

精神的な自由を勝ち取ることができるのはまだまだこれからだと感じさせる言葉です。

おすすめ度★★★

「僕はイエローでホワイトでちょっとブルー」に出てきた引用されていた本書。気になり手に取ってみました。

説教と犯罪がいかに男性主体であるか、ここがずるずるつながっているとの指摘、鋭い示唆だと思いました。

ヴァージニア・ウルフを引用しての精神的な自由についての話。印象に残りました。

ともに言語化が難しいところを明確に書いてくれた感です。

 

説教したがる男たち

説教したがる男たち