どんぐり君とおにぎり君のママの読書日記

アラフォー、2男の母のブックレビューです。読んだ本の簡単な内容・あらすじ・感想をメモしてます。

村上春樹さんの「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」を読みました。~なぜ、友人たちは急に冷たくなったのか。犯人が推理できても、できなくても。

 

村上春樹さんの「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」を読みました。

色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年 (文春文庫)
 

内容・あらすじ

主人公・多崎つくるは36歳の独身、鉄道会社で駅を設計する仕事に携わっている。 名古屋市郊外の公立高校時代、同じクラスの友人4人といつも行動を共にしていた。自分だけ東京の大学に進んだあとも、交流は続いていたが、大学2年7月に突然、理由も分からないまま友人たちから絶縁される。その後は「ほとんど死ぬことだけを考えて」過ごす時期が続く。 鉄道会社に就職し、いま交際している2つ年上の38歳の女性・木元沙羅に、当時の友人たちに会って直接話をし、事態を打開しなければと勧められ、一大決心をして、友人たちに会いにいく。 グループのうち、「アオ」と「アカ」は故郷の名古屋にいて、「クロ」はフィンランドのヘルシンキに家族とともに住み、「シロ」は他界していた。つくるは最初に訪ねた「アオ」から絶縁のいきさつを教えられ、その翌日に「アカ」のオフィスを訪ねる―。(Amazon内容紹介より)

感想(ネタバレあります)

多崎つくるはなぜ五人組を追われたのか

多崎つくるは、大学生の時に友人達から絶縁されます。
当人には全く思い当たるところがなく、このことは、36歳になったつくるの中でしこりとなって残っています。
恋人の沙羅に背中を押され、10年以上の時を経て、つくるは友人たちの元を巡礼します。
そして、大学生の時に何が起きたのかが明らかになっていきます。
謎を追っていくという点で、ミステリー的要素を持つ小説です。

小説に明言されている回答はごく一部

小説には、
  • シロが何者かに実際にレイプされたこと
  • シロは「つくるにレイプされた」と証言したこと、
  • グループの他の友人達はこれを信じるか、信じざるを得なかったこと、
  • だからやむを得ず、つくるをグループから追い出したこと
が書かれています。
そして、その後、シロは何者かに殺されてしまいます。
では、シロはなぜつくるを(レイプの)犯人にしたのか。
また、実際にシロをレイプした犯人、そして殺した犯人はだれなのか。
それは物語では明らかにされていません。

これについて説得力のある分析をされているブログがありました。

sonhakuhu23.hatenablog.com


本書と、こちらのブログの分析を読むと、本作の構成ががっちりと練られたたものだとわかります。
  • 赤、青、白、黒の意味(そして灰の意味)。
  • シロを殺した犯人。
  • 沙羅はなぜつくるの背中を押して巡礼の旅に出させたのか。
  • 沙羅の恋人? とはだれか。
が推理されています。
本書を読んだ方はぜひご覧ください。
なるほど! と目からうろこが落ちる推理ばかりでした。

白を殺した犯人が推理できなくても、十分楽しめる

ここまで仕込まれた作品ではありますが、
でもその構成がわからなくても、それでもいろいろな要素を、
例えば、新しい友人の灰田との交流とか、沙羅との会話とかのデティールを読むだけで心地よいと感じます。
あるいは、見えなくともしっかりとしたつくりが支えになっているからこそ、
文章として描かれ現れている氷山の一角が深みのあるものになっているのでしょうか。

おすすめ度★★★★★

実は、村上作品は初期が好き、と思いこみ、後期の作品は一度読んだきり。
再読はしていませんでした。
今回ふとしたきっかけで読み返し、本書を解析したブログ記事を読み、大きな構成という観点からの作りと、やはり魅力的なデティール、部分部分に表される考えやテーマみたいなものに惹かれ、他の後期作品も読み返したいと思いました。

メタファーが多く、一度ではよく各メタファーの意味が分からないなと感じた後期作品、またじっくり楽しんでみたいです。
 

色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年 (文春文庫)