凪良ゆうさんの「流浪の月」を読みました。
内容・あらすじ
【2020年本屋大賞受賞作】
せっかくの善意を、
わたしは捨てていく。
そんなものでは、
わたしはかけらも救われない。
愛ではない。けれどそばにいたい。
実力派作家が放つ、息をのむ傑作。
あなたと共にいることを、世界中の誰もが反対し、批判するはずだ。わたしを心配するからこそ、誰もがわたしの話に耳を傾けないだろう。それでも文、わたしはあなたのそばにいたい――。再会すべきではなかったかもしれない男女がもう一度出会ったとき、運命は周囲の人を巻き込みながら疾走を始める。新しい人間関係への旅立ちを描き、実力派作家が遺憾なく本領を発揮した、息をのむ傑作小説。
(Amazond 内容紹介より)
ちょっと普通とは違う家庭に育った更紗は、父の死、母の失踪の後、叔母宅で暮らし始めますが、なじめません。また、耐えられないことが続きます。
ある時、更紗は家を出て、同級生たちにロリコンとうわさされる男性と出会い……
感想
他人から見ればロリコンの誘拐。当人たちからしてみれば、世界で唯一の理解者との出会い
居場所のない小学生更紗が、ロリコンとうわさされる男性、文の家で暮らす。
それは他人から見ればロリコンの誘拐にしか見えず、当人たちからしてみれば、世界で唯一の理解者との出会いであったというこのあまりに大きなずれが生じる可能性があるという着眼点。
人と人との関係は、他人には想像がつかないものがあると考えさせられます。
更紗も文も、いわゆる普通の形の幸せは手にしていませんが、理解者に巡り合うことで十分生きていてける、むしろ人が生きる理由は、理解者との出会いと感じさせます。
「1章 少女のはなし」の少女とは誰か
本書には、
- 少女の話
- 彼女の話IとIIとIII
- 彼の話IとII
という章があります。
最初に「少女の話」を読んだとき、この少女が誰であるのかわかりません。
少女のはなしの次に彼女のはなしが来るので、一見、少女=彼女か? と思うのですが、彼女のはなしを読み始めると、あれ? なんだかちがいそう。
1章の少女が誰であったかは、最後まで読むとわかるようになっています。
最後まで読んだら、1章をもう一度読んでみると、なるほど感があります。
理想なのか、なぜか少し怖い
暑い日の夜ご飯はアイスクリーム。
映画の日はデリバリーのピザをとってサイダーを飲みながら床に寝転んで映画を見る。
親子できれいな色のカクテルを作る。
いわゆるきちんとしたよその家庭からは異端として見られる、更紗の家庭。
2章の彼女のはなしを読んでいて、江国香織さんの流しの下の骨を思い出しました。
これもまた世間とはかなりずれた家族の話です。
家族の中でも、家族の外ともうまくやっていければ、こんな変わった家庭があってもよいのかもしれません。
でも、家族の中が快適であればあるだけ社会に適合するのはハードルが高く。
家族から外に出るときに払うツケの大きさを感じさせます。
著者について
ボーイズラブの作家さん、と読後初めて知りました。
また、「どこまでも世間と相いれない人たち」を書いていきたいと、インタビューで語っていらっしゃいます。
まさに本作の主人公の2人。
どこまでも世間と相いれないけど、そんな彼らに理解者があらわれるハッピーエンド、いいな、と思いました。
おすすめ度★★★★★
一気に読んでしまいました。
読みやすく、登場人物に共感しやすいと感じました。