宮下 奈都さんの「羊と鋼の森 」を読みました。
内容
高校生の時、偶然ピアノ調律師の板鳥と出会って以来、調律に魅せられた外村は、念願の調律師として働き始める。ひたすら音と向き合い、人と向き合う外村。個性豊かな先輩たちや双子の姉妹に囲まれながら、調律の森へと深く分け入っていく―。一人の青年が成長する姿を温かく静謐な筆致で描いた感動作。(Amazon内容紹介より)
感想
音を表現する言葉の多様さ
ピアノの調律師を目指す目指す青年が主人公の本。
中学校の時に初めてピアノの調律師に出会うところから始まり、専門学校に通い調律師として働き始め、成長していく様子が描かれた小説。
ピアノの調律の世界が豊かな表現で描かれています。
硬い音。柔らかい音。
そんな簡単な、漠然とした表現にとどまらず、「春の風のやわらかさ」、「カケスの羽の柔らかさ」といった、音のイメージを表現する言葉が紡がれます。
実際にピアノの調律の世界で、そのような言葉が使われるのかわか知りませんが、ピアノの調律とは、クライアントとの言葉を始めとしたやりとりをヒントに、クライアントが持つ音のイメージを、手探りで探り当て、そして、それを音に変えていくというとても繊細な作業だということを伺い知ることができました。
静かな雨の日に家にこもって読みたい物語
主人公の性格や、ピアノの調律の世界の深淵さから、この小説には雨が似合うと感じました。
雨の日に家や静かなカフェでクラシック音楽を聴きながら読みたい本。
その道の専門家になるには1万時間が必要といわれています。でももし、一万時間かけても、到達できなかったら?
外村青年は自分の技術のなさに苦しみます。しかし素直なのが彼の良いところです。初めは冷たかった秋野さんも、彼が真剣にメモを取る様子をみて、心をひらいていきます。
何かを学ぶ時は、彼のように、自分が全く分かっていないと認め(無知の知)、オープンにし、愚直に、気持ちよく成長していきたいものだと思いました。
おすすめ度 3
本書は
第13回本屋大賞、
第4回ブランチブックアワード大賞2015、
第13回キノベス!2016 第1位
とたくさんの賞を獲得しています。
初回の印象としては、物語、人間関係、感情の起伏が静かな物語。
わかりすいエンターテインメント性を求める場合、少々物足りなさを感じるかも? と感じましたが、これこそが求められている物語なのかもしれません。