どんぐり君とおにぎり君のママの読書日記

アラフォー、2男の母のブックレビューです。読んだ本の簡単な内容・あらすじ・感想をメモしてます。

森絵都さんの「この女」を読みました。~釜ヶ崎で働く青年が、ある女性を主人公に小説をかく、小説。徐々に明らかになる、女性と青年の過去と人物像。

森絵都さんの「この女」を読みました。

 

この女 (文春文庫)

この女 (文春文庫)

  • 作者:森 絵都
  • 発売日: 2014/06/10
  • メディア: 文庫
 

内容・あらすじ

甲坂礼司、釜ヶ崎で働く青年。二谷結子を主人公に小説を書いてくれと頼まれる。
二谷結子、二谷啓太の妻。神戸・三宮のホテルに一人で住み、つかみ所がない女。
二谷啓太、チープ・ルネッサンスを標榜するホテルチェーンのオーナー。小説の依頼主。
大輔、甲坂礼司に小説書きのバイト話を持ってきた大学生。
礼司に神戸の住まいを提供。松ちゃん、釜ヶ崎の名物男。礼司が頼りにし、なにかと相談するおっちゃん。
敦、二谷結子の弟。興信所経営。結子のためなら何でもする直情型の気のいい男。

震災前夜、神戸と大阪を舞台に繰り広げられる冒険恋愛小説。
3年ぶり、著者の新境地を開く渾身の長篇書き下ろし。(Amazon内容紹介より)

感想

本作の主人公は20代男性

森絵都さんといえば、思春期の子か女の子が主人公。

というイメージを覆される作品でした。
本作の主人公は釜ヶ崎で働く青年礼司。
なぜ、若い礼司は日雇い労働をしているのか。
なぜ、定職につけなかったのか。
なぜ、他の若い子のようにバイトをしていないのか。

その謎はずっとふせらていて、物語の最後で明かされます。 

この女や礼司の過去には何があったのか。

礼司はある女を主人公に小説をかいてほしいとたのまれるところから始まります。
(この小説自体が、礼司が書いた小説で、礼司の目線から書かれています。)
礼司は結子の小説を書くにあたり、結子の過去を聞こうとします。
ところが、結子はのらりくらりとウソをつき、なかなか過去を語ろうとしません。
最初の謎は結子という人物そのもの。
なぜ、きつい化粧をし、派手な格好をし、ホテルチェーンのオーナーの妻になったのか。
嘘をついて隠し通す過去には何があったのか。
そして夫はなぜ結子の小説を書いてほしいなどといったのか。

徐々に明らかになる結子の人間像、そして、夫が小説を依頼した理由。
特に、各人物像を形づくった結子の過去、礼司の過去に何があったのかという謎にひかれて一気に読みました。

おすすめ度★★★★

他の、思春期の少年少女や女性が主人公の森絵都さんの作品とは一味雰囲気の異なる作品でした。
が、各キャラクターの人物が鮮やかに丁寧に描かれているという印象は、他の作品と共通です。
だからこそ、礼司の過去、結子の過去を紐解かれていく様子から目が離せず、それが現在の彼らに結びついているということがとてもリーズナブルに感じられました。

 

この女 (文春文庫)

この女 (文春文庫)

  • 作者:森 絵都
  • 発売日: 2014/06/10
  • メディア: 文庫