大沼 紀子さんの「真夜中のパンさん 午前5時の朝告鳥」を読みました。
概要・あらすじ(Amazon内容紹介より)
真夜中に開店する不思議なパン屋「ブランジェリークレバヤシ」。希実の母・律子の死から五年の月日が経ち、暮林や弘基の周辺には様々な変化の波が訪れていた。それは、常連客である斑目やソフィアやこだま、美作親子や多賀田たちにとっても同様だった。そしてもちろん、希実にとっても……。累計140万部突破のベストセラー「まよパン」シリーズ、ついに完結!!
内容のメモと一言感想
前巻にあたる5巻で、希実の母・律子が亡くなる。
それで、この物語は終わりになってもよさそうなところ、その後の世界が描かれるところ、希実がもうひとつ本当に山を越えるところが描かれる点、新鮮に感じました。
好きなところ
この後日譚ともいえる6巻があるところがよかった。
後日譚は余計なものにもなりがちなところ、本シリーズの6巻はしっかりとした存在意義を感じさせます。
6巻で初めて、そしてもう一皮、希実が母から卒業する感がありました。
広基と希実の関係が、お互いを完全に最愛の人、唯一無二の人と100%思っているわけではなくて、少し危うい感じがするところがまたリアル。
これだけの経験値を持った2人であっても、関係を作るのは手探り。
シンデレラのようなハッピーエンドよりも、この手探り感がある2人の方が、長い未来が待っていそうな気がします。
おすすめ度 ★★★★
恋人と遊ぶために、あらゆる手段を使ってこどもをあずける母のもとに生まれた希実。
そして、メインの登場人物たちはみな、なかなかに複雑なバックグラウンドを持っています。
こんな複雑なバックグラウンドを持っている主人公たちに、そこまで特殊な家庭に育ったわけではない普通の読者も、気づけばなぜか共感してぐんぐん読み進むところが、著者の筆運びのうまさ。
おいしそうなパンの描写も素敵でした。
居場所のない人が集える理想郷のパン屋さんが描かれた作品。
面白かったです。