どんぐり君とおにぎり君のママの読書日記

アラフォー、2男の母のブックレビューです。読んだ本の簡単な内容・あらすじ・感想をメモしてます。

村田沙耶香さんの「コンビニ人間」を読みました。~36歳独身、コンビニのバイトに生きる主人公の人生を肯定できるか。

 

村田紗耶香さんの「コンビニ人間」を読みました。

コンビニ人間 (文春文庫)

コンビニ人間 (文春文庫)

 

 内容・あらすじ

「普通」とは何か?
現代の実存を軽やかに問う第155回芥川賞受賞作

36歳未婚、彼氏なし。コンビニのバイト歴18年目の古倉恵子。
日々コンビニ食を食べ、夢の中でもレジを打ち、
「店員」でいるときのみ世界の歯車になれる――。

「いらっしゃいませー!!」
お客様がたてる音に負けじと、今日も声を張り上げる。

ある日、婚活目的の新入り男性・白羽がやってきて、
そんなコンビニ的生き方は恥ずかしい、と突きつけられるが……。

累計92万部突破&20カ国語に翻訳決定。
世界各国でベストセラーの話題の書。(Amazon内容紹介より)

感想

36歳独身、正社員ではなく、コンビニのバイトだけに生きる「普通ではない」女性

本書の主人公は、36歳独身の女性。
36歳独身の女性、恋人もいない。特に趣味もない。唯一真剣に取り組んでいるのがコンビニでのバイト。

家族や友人は、主人公が「普通」でないことを嘆き、かわいそうだと思い、おせっかいを焼きます。
主人公はそんな周りの人の「普通」を求める感覚が理解できません。
本書を読んでいると、主人公のことをかわいそうだと思っておせっかいを働く友人や、家族や、同僚のことをうっとうしく感じ、

「ほっといて」

と思います。

本書の主人公はかなり少数派の趣向を持つ女性ですが、
そろそろ結婚しろとか、そろそろこどもをつくれとか、せっかく正社員になれたのになんでやめちゃうのとか、世間の規範からずれていることをおせっかいにも他人に指摘されて、

「ほっといてくれ」

と思った経験のある人は少なくないはずで、それの何が悪いの? という気持ちを持ったことがある人には何か共感できる部分があるかもしれません。

一方で、主人公のことが怖い、理解できない、本当にそれでいいの? という気持ちも正直どこかにあり、自分の中にも、世間一般の固定観念が刷り込まれていることを自覚させられます。

定型の幸せの形を求めることが幸せか

本書は、主人公が、社会規範から外れたモデルとしてわかりやすく描かれていて、
結婚して子どもを作る幸せ、とか、
正社員になって働く、とか、
社会で規範とされる型を信じ、それ沿って生きることが本当に幸せなのか
という投げかけが鮮やかです。

おすすめ度★★★★

クレイジー沙也加の異名をもつ著者ならではの、「普通ではない」を感じさせる作品。
そして読んでいるうちに、主人公が普通ではないのか、社会的な理想にはまることを追い求める人が普通ではないのか、わからなくなっている作品。
著者が投げかける問いかけは、しごくもっともだと感じます。

ここのところ村田さんの作品を何冊か読んでいます。
芥川賞を受賞した本書は、テーマが明快で、初めて著者の本を読む方にお勧めです。

 

コンビニ人間 (文春文庫)

コンビニ人間 (文春文庫)