どんぐり君とおにぎり君のママの読書日記

アラフォー、2男の母のブックレビューです。読んだ本の簡単な内容・あらすじ・感想をメモしてます。

椰月美智子さんの「消えてなくなっても」を読みました。~社会からドロップアウトした2人が不思議な治療院で癒される話、と思いきや……清らかな癒しの小説。

 

椰月美智子さんの「消えてなくなっても」を読みました。

 

消えてなくなっても (角川文庫)

消えてなくなっても (角川文庫)

 

 内容・あらすじ

物語の主人公「あおの」はタウン誌の編集者になったばかりの新人社会人で、高千穂を思わせる神話の国のような山中にある鍼灸治療の「キシダ治療院」を取材で訪れる。幼少期に両親を亡くし、親戚の家で育ったあおのは、血の繋がった家族というものを知らずに育ち、ストレス性の病を患っていた。難病患者のどんな病も治してしまうという、どこか妖しげな治療院には、不思議な力を持つと言われている節子先生が暮らしていた。そこには、あおのと年齢の近い「つきの」という女の子が、手伝いとして住み込みながら治療を続けていた。ひょんなことからあおのも住み込んで治療に専念することになり、二人は規則正しい暮らしの中で、少しずつ距離を縮め、いつしか二人の病気は回復に向かっていくはずだったのだが……。ある日、庭に河童が顕れていることを発見したときから、二人の運命は大きな展開を迎えることに。二人を呼び寄せたものは何だったのか。物語のラストで驚きと共に感動に包まれることでしょう。文庫化にあたり、節子さんが“視える”ようになった幼少期の出来事を描いた「春の記憶」を収録。(Amazon内容紹介より)

感想

社会からドロップアウトした2人が不思議な治療院で癒される話、と思いきや……

主人公のあおのは、社会人としての1歩を踏み出しはしたものの精神的な病で一時職場を離れます。
やがてあおのは、養子であることが読者に知らされます。
あおのが居候することになる機種た治療院はとても不思議なところ。
主である節子先生の不思議な力を持っていて、患者さんに、指圧や針の治療を施すばかりではなく、憑いている怪しいものを退治します。
節子先生はとても心の大きなおおらかな人で、あおのの存在を、そして、やはり同じ時期にキシダ治療院に居候しているつきのの存在を肯定してくれるような存在です。
2人は、社会で受けた傷を少しずつ癒していき、いずれは治療院を卒業して社会に戻っていくのかなと思いきや……ラスト物語は意外な展開を見せます。

おすすめ度★★★★

「会えなくなったら友達ではないのか。死んでいるから友達ではないのか。おかしな話だ」

カッパのきよしのことばが余韻に残りました。
優しい雰囲気の中進んできた物語のラストはある意味厳しいものですが、2人と接した時間や交わした会話は消えないし、思う気持ちも消えない。そもそもその過程が生きるということなのだと感じさせる一言です。
物語の全体を通して、澄んだ癒しの雰囲気を感じる小説でした。

 

消えてなくなっても (角川文庫)

消えてなくなっても (角川文庫)