どんぐり君とおにぎり君のママの読書日記

アラフォー、2男の母のブックレビューです。読んだ本の簡単な内容・あらすじ・感想をメモしてます。

椰月美智子さんの「かっこうの親 もずの子ども」を読みました。~母でなければ書けない小説。ありそうな日常と、尋常ではない愛。

 

椰月美智子さんの「かっこうの親 もずの子ども」をよみました。

かっこうの親 もずの子ども (実業之日本社文庫)
 

 

内容・あらすじ

迷いも哀しみも、きっと奇跡に変わる――。幼児向け雑誌の編集部で働く統子は、4歳の息子・智康を保育園に預けながら、仕事と育児に追われる日々を送っている。予定通りには進まない仕事、智康の突然の発熱、保育園からの呼び出し、孫に会いたいとやって来る実母とは気持ちがすれ違い、ママ友との人間関係にヒヤリとする。それでも、智康が見せる笑顔や成長の様子に癒され、親友の朝子と励まし合い、シッターの神田さんの力を借りながら、懸命に過ごす。そんなある日、統子は旅雑誌のグラビアページに智康とそっくりの、双子の少年が載っているのを見つけた。智康の出生には、親にも話していない秘密があった。元夫の阿川は子どもをほしがったが、精液所見で問題が見つかっていたのだ。統子は智康を連れ、写真の撮影地である五島列島・中通島へ向かうが――。日々を全力で生きる親子たちの姿を通し、命の尊さ、親子の絆、家族の奇跡を描く著者の渾身作。「おかあさん」とかつて子どもだったあなたに贈る感動小説!

 

感想

かっこうは、もずの巣に自分の卵を産卵する

かっこうは他の鳥の巣に自分の卵を産みます。
そしてカッコウの雛は他の鳥の巣で生まれ、他の鳥の子供達と一緒に育てられます。
本書は、非配偶者人工授精で子どもをさずかった、統子と、その子智康の物語です。

ママ友とのこじれのリアル

小説の良さは、自分が体験していない世界を疑似体験できること。

小説の中の世界や日常は、作者がその世界を体験せずに作り上げられることも、ままあります。
しかし、本書は間違いなく「母」を経験した人によって書かれたもの。
読んでいて何度も思いました。

母である著者でなければ書けなかっただろう母のリアルが、ところどころエッセイのようにリアルに描かれています。
子供を何ごとにも代えがたいと思うほど大事に思う気持ち、
ママ友とのいざこざ、
仕事でやむを得ず遅くなった時の焦りの気持ちと、
シッターさんへの心からの感謝の気持ち。
随所共感が湧きます。

尋常ではない母という生き物の子どもへの思い

主人公は、長崎原爆資料館に足を運んで、ほとんど死にかけていながらも、子供を救おうとする母親の話に衝撃を受けます。
また、知り合いのどこまでも完全母乳にこだわろうとする母親に薄ら寒いものを感じます。
そうやって他人である母の話しを聞くと、
「ちょっと異常なんじゃない?」

そんな冷静な感想を抱くこともできますが、果たして自分は母として異常な行動をしていないのか、そう問われるとYESという自信はありません。
それでこそ母なのかもしれません。

ラストは母として最大の恐怖

小説の最後には母としての最大の恐怖が待ち受けています。
後味が悪いという指摘もあるようですが、こうして感想を書いていると、この事件は、この小説には必然だったように感じてきました。
母としての最大の恐怖は、子供がいなくなってしまうこと。
そして、その状況を目の当たりにした統子は、息子の存在と息子への思いを強く再確認して、物語は幕を閉じます。

おすすめ度★★★★

母として、共感を読む箇所がたくさんある小説。
(きっと、母以外の立場の人が、母を疑似体験するにも良い小説)
著者の母体験が生きているのはもちろん、多くの母が「共感できる!」と感じる書き方がうまいのだろうな、とも感じました。

母でなければ書けない作品。そして「母の愛はちょっと尋常ではない」感がよくでていて、それがリアルに感じられる小説でした。

かっこうの親 もずの子ども (実業之日本社文庫)