どんぐり君とおにぎり君のママの読書日記

アラフォー、2男の母のブックレビューです。読んだ本の簡単な内容・あらすじ・感想をメモしてます。

柴門ふみさんの「非婚家族」を読みました。~核家族から非婚家族へ。みんなで家族のように仲良く寄り添って生きるコミュニティで生きる。

柴門ふみさんの「非婚家族」を読みました。

 

内容・あらすじ

平凡な家庭生活を営む平凡なサラリーマン…それが自分の人生だと思い、今まで暮らしてきた的場洋介。
それが最近、「平凡の下」にまで落ちつつあり、かつての夢や希望は遠くなってしまった。
そんなある日、洋介は1年前に離婚した元妻・知華子と偶然再会する。知華子は洋介が住んでいるとは知らず、同じ駅のマンションに引っ越してきたのだった…。
(Amazon内容紹介より)

主人公の洋介は、コーヒーの企画の仕事をする平凡なサラリーマン。
専業主婦の奥さんひかると、こども翔太との3人暮らし。
ところがある日、奥さんのひかるが家を出てしまいます。
ひかるはスナックでバイトをしながらダンサーを目指します。
彼女は、子供が生まれてからの7年間、ずっとその思いを押し殺してきたとのこと。
続いて、洋介はリストラの憂き目に遭います。
社宅に入っていた洋介は家も、妻も、仕事も失い、偶然再会した離婚した元妻・知華子の元で居候をはじめます。

感想

2000年ころの作品とは驚き

登場人物それぞれの持つ価値感が、とても15年前の作品とは思えませんでした。
自分の夢を追い求めて小学校低学年の息子を放り出していってしまうひかる。
自分のキャリアをしっかりと築き上げ、雑誌の編集長として働きながら、美しく、恋もつかむ千華子。
ジャグリングという特技を持ち、夜のバイトもしながら介護職を目指すセリカ。
女性たちがそれぞれ自分の夢や仕事やりたいこと、技能を持つ様子がたのもしいです。

若い男性・クッキーは、色々な資格にチャレンジするなどキャリアに対する意識がないわけではないのですが、どこか軽く浅いものを感じさせます。
しかし、この中のどれかが将来何かに繋がるかもしれないという余裕のあるスタンスと、仕事に関しては上司の千華子をはっとさせる熱心さをみせるところには、こういうスタイルもあるよな、納得させられます。

反して、主人公の洋介は前時代の象徴、オールドファッション的なサラリーマンとして描かれています。
自分で考え、ときには大胆な行動をする女性陣や若い男性に1歩遅れをとっているように見えます。

新しい価値観をもつクッキーをパートナーにした千華子の言葉

四巻の後半、ついにそろそろ洋介が千華子の家から去ろうという時、2人がベランダで交わす言葉がとても印象的です。

男が定職についてお金を稼ぐことってそんなに重要?
一流企業のサラリーマンで型収入を得てそれで幸せだった?
世間に聞こえのいい就職先、職業それがどれだけの幸福をあなたにもたらせてくれた?

洋介に代表される、オールドファッション的サラリーマンに向けられた言葉です。
一流企業というブランドにこだわり、家族との時間をとれないサラリーマンに刺さる言葉かもしれません。

今の二十代ってねあたし達と明らかに違う基準で生きているの。それが正しいかどうかはまだ分からないわ。でもそういう価値観の男を人生のパートナーに選んだのは私。彼に沿って生きてみる。
若い旦那っていいわぁ、思いもかけない行動に出て人生ジェットコースターに乗っているみたいよ。

 新しい価値観の男性をパートナーに選んだ千華子の力強い言葉。
前向きに人生を楽しもうとする感じ、なんともわくわくさせられます。

これからもずっと私たちのそばにいてね。私の夢は・・・みんなで家族のように仲良く寄り添って生きることなの信頼しあえる人間同士困った時は手を差し伸べる不足な分部分を補いあって血縁とか戸籍とかそういう枠に縛られるんじゃなくてね。

ここは考えさせられます。
人生のパートナーを1人と決めて、その1人にすべてを求めるのではなく、信頼できる人間の輪の中で生きていく。
核家族という狭いコミュニティで現代社会を生き抜くことの限界を、指摘しているのかもしれません。

クッキーは私を愛してくれる優しい旦那様よ。
でも20代の男に多いに向かっていく30後半の女の不安は受け止められないと思う。
ハタチのあたしも40近いあたしも両方知ってくれるようちゃんが側にいてくれる。
それだけで安心なの。

千華子はクッキーにすべてを求めてはいないことが明言されています。
若いパートナーに、はじめから求めていない部分もあるのです。
同年代にしかわからない部分の共感は、これからも同年代に求めます。

そして、ラストには千華子とひかるとがダンスを楽しむシーンも出てきます。
同性としかわかちあえないことは、同性と楽しむ様子が描かれています。
核家族から非婚家族へ。
たとえ、血縁関係にあってもなくても、信頼のおける人間関係を結んでいき、その中で生きることで、もっと楽に幸せに生きることができるのかもしれない。
そんな可能性を感じさせるお話でした。

おすすめ度★★★★★

それぞれのキャラクターが、明確な価値観・役割をもって動いている感、その価値観がリアルで納得がある感、さすが数々のドラマを作られている柴門さんの作品だなと思いました。

今読んでも考えさせられるところの多い作品です。

 

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  • 作者:柴門ふみ
  • 発売日: 2012/09/25
  • メディア: Kindle版
 
非婚家族(3) (ビッグコミックス)

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非婚家族(4) (ビッグコミックス)

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  • 作者:柴門ふみ
  • 発売日: 2012/09/25
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