どんぐり君とおにぎり君のママの読書日記

アラフォー、2男の母のブックレビューです。読んだ本の簡単な内容・あらすじ・感想をメモしてます。

平野啓一郎さんの「かたちだけの愛」を読みました。~片足を失った女優とデザイナーの再生物語。分人が如実に表された作品

平野啓一郎さんの「かたちだけの愛」を読みました。

かたちだけの愛 (中公文庫)

かたちだけの愛 (中公文庫)

 

あらすじ・内容

自動車事故で、片足を切断する大怪我を負った女優の叶世久美子。偶然、現場に駆けつけたデザイナーの相良郁哉は、その後、彼女の義足を作ることになる。しだいに心を通わせていく二人は、それぞれの人生の中で見失っていた「愛」を取り戻そうとするが…。平野啓一郎が描く、愛のかたち。(「BOOK」データベースより)

感想

どんどん久美子のイメージがかわっていく

芸能人の久美子、元恋人から聞いた久美子、周りが噂する久美子、家族の中の久美子、そして、相良の前の久美子はまるで違う人のようで、そのギャップの大きさが印象に残りました。
同じ人が一緒にいる人によって人格を変えるのは全然あり得るだろうなとリアルでした。
芸能人の久美子はある意味演じている久美子だからもっとも、意図的に人工発生した、久美子。
元恋人の前の久美子は、元恋人に引き出された、ある意味本当の久美子の1人、自然に発生した久美子。
そして、やはり一番好ましいなと感じるのが相良と一緒にいるときの久美子。
久美子の中で、相良に対する分人が育っていってほしい、と思った。
自分が好ましい自分でいれるということが、その人と一緒にいて幸せだということになのだと思った。

相良の愛の再生

足を失った久美子の再生物語であるとともに、離婚したばかりで愛を失った相良の再生物語てある作品。

おすすめ度 ★★★

かなりテーマ性の強い作品。
テーマを表現するために設定を実験的にしたのだなと感じました。
平野さんの分人主義に触れるのに、わかりやすい1冊といえそう。

かたちだけの愛 (中公文庫)

かたちだけの愛 (中公文庫)