内容・あらすじ
優等生の「ぼく」が通う元・底辺中学は、毎日が事件の連続。人種差別丸出しの美少年、ジェンダーに悩むサッカー小僧。時には貧富の差でギスギスしたり、アイデンティティに悩んだり。世界の縮図のような日常を、思春期真っ只中の息子とパンクな母ちゃんの著者は、ともに考え悩み乗り越えていく。落涙必至の等身大ノンフィクション。(Amazon内容紹介より)
著者は、イギリスで保育士として働いていらっしゃるプレディみかこさん。
いわゆる、底辺中学に行った子供の話を中心に、イギリスの子供たちの経済格差を含む多様性が描かれた本。
感想
イギリスの子どもの階級格差
イギリスの子供たちにこれほどの経済格差があること、知りませんでした。
特に貧困の子供たちの深刻さ。
学校の先生はお腹を空かせた子供たちのためにパンを買ってあげたり、私服がなくて私服の登校日に学校に行くことができない子供達にスーパーでシャツとジーンズを買ってあげたり、ソーシャルワーカーのような働きもしているとのこと。
また、ティーンエイジャーの家出、行方不明者の多さにも驚愕です。
(イギリスでは5分に1人の子供が行方不明になっているとの計算。)
底辺中学に行くという選択
学校を選択するには色々な選択基準がありますが、著者の家族が底辺中学を選んだのは、直感だったのではないかと思いました。
客観的な事実から言うと、お子さんが選んだ中学の方が活動が盛んで生命力にあふれている。
そして、多様性に触れられる。
そもそもいくはずだったカソリック中学に比べ、「底辺中学」には、色々な国と繋がりを持つ子や、色々な経済ランクに住む子がいます。
そして、多様性に触れ、その中で何とかやっていくということが、なんと大変だけど、無知からの成長になるか。
いずれ迎える子供の受験の際の学校選択に、そういう観点こそが必要なのかもしれません。
日本で言うと、多様性を求めた場合、公立を選択するということになりそうですが、実際問題住んでいる場所によって、多様性に富んでいる学校か、そうでないかは結構違いそうです。
妻の人生は夫の親切にかかっていた
ヨーロッパは男女平等が世界に一番進んでいるような印象を持っていましたが、それも長い時間をかけて法制度が改正されて少しずつ社会が変わってきたからとのこと。
実際、今でも女性は家父長制と戦っているとのことでした。
手に届く記事や情報として、欧米のカップルはこんなに男女平等が進んでますよという実例が紹介されることが多く、もしかしたら「欧米は男女平等が進んでいる側面」が少し誇張されて伝わっているのかもしれないと感じました。
近年、「結婚の平等」という言葉が欧米ではさかんに使われるようになっているそうです。
男女の不平等性を抱えた者の異性婚とは違う、家父長制から全く自由な関係性である同性婚の存在は、伝統的な結婚制度の脅威との言葉、なるほどでした。
伝統的な結婚制度が出来上がってしまった男女のカップル間でフラットな関係を作るほうが、はるかに難しいのかもしれません。
おすすめ度★★★★★
情報として勉強になるとともに、子供時代から多様性に関したくさんの経験をつんだ著者の言葉がしみました。
「多様性はうんざりするほど大変だし、面倒くさいけど、無知を減らすからいいことなんだと母ちゃんは思う」