どんぐり君とおにぎり君のママの読書日記

アラフォー、2男の母のブックレビューです。読んだ本の簡単な内容・あらすじ・感想をメモしてます。

佐川光晴さんの「生活の設計」を読みました。〜屠殺と主夫業

佐川光晴さんの「生活の設計」を読みました。

生活の設計

生活の設計

 

概要・あらすじ(Amazon内容紹介より)

ぼくが屠畜場で毎日ナイフを持って働いている理由?よし、説明してみよう!キツイ仕事ゆえ、午前中で終業だから、共働きの妻にも幼い息子にも都合がいい。ぼくの体質にも最適なんだ。しかし…各紙誌で話題、爽快な新潮新人賞受賞作。

内容のメモと一言感想

本書について

著者のデビュー作であり、主人公の僕の職業、奥さんが劇団であること、子どもがいること、屠殺業を生業としていること、などなど、著者の私小説とも思えるほど著者が投影された僕を主人公とする物語。

なお、著者は、本書は私小説ではないと、後書きで明言していらっしゃいます。

登場人物のうちの、大学の同級生は架空の人物なんだろうな、と想像しながら読みました。

虹を追いかける男に収録されている

この佐川さんのデビュー作が読みたくて、読みたくて、図書館で予約して取り寄せたのですが、のちに別の本、虹を追いかける男に収録されていることがわかりました。

最初からこちらを読めばよかった…

印象に残ったところ

本書は屠殺についての職業小説とも言われていて、確かに屠殺業の詳細が生き生きと描かれています。

屠殺が、職業として、つまり、訓練と習熟と丁寧かつ合理的な手順が要求される仕事として、冷静に描かれていて、気持ちの良い肉体労働をしたかのような爽やかさを感じました。

ぼくがなぜ屠殺を生業としているのか、それは一言で答えられるものではなく、本書がその答えがそのものとなっています。

好きなところ

仕事の説明の詳細さの程度が、心地よく適度だと感じました。専門的になりすぎず、もしかしたらなっているかもしれないけど、それはそれで嫌な感じがせず、淡々としていて、職人のようなイメージ。

おすすめ度 ★★★★★

物語の途中で、一瞬僕が仕事として屠殺を選んだことに対する明快な解があることを期待しましたが、読み終わる頃には、僕の生活の設計が解なのかもしれないと思いました。

そこには否定されるものなど何もなく、こんな清々しい感じで仕事ができて、時間もあって、ある意味一つの完成された生活の設計なのではないかと思いました。