森絵都さんの「つきのふね」を読みました。
内容・あらすじ
あの日、あんなことをしなければ…。心ならずも親友を裏切ってしまった中学生さくら。進路や万引きグループとの確執に悩む孤独な日々で、唯一の心の拠り所だった智さんも、静かに精神を病んでいき―。近所を騒がせる放火事件と級友の売春疑惑。先の見えない青春の闇の中を、一筋の光を求めて疾走する少女を描く、奇跡のような傑作長編。(Amazon内容紹介より)
感想
さくらと梨利のすれ違いに心震える
同じグループに入り、いつしか万引きに手を染め、このままではいけないと抜け出そうとしたさくらと梨利。
2人はリーダーの女の子にグループを抜けたいと言い出します。
すると最後に2人ノルマが課せられます。
フィルム500本を盗む。
そして2人はフィルム500本を盗んでいる間にスーパーの店長に捕まります。
正確には、実際に捕まったのはさくらで、梨利はその場を逃げ出します。
2人に付きまとう勝田は、この話を聞いて梨利がさくらを裏切ったんだと思います。
しかし、さくらは自分が梨利を裏切ったのだといいます。
なぜなら、万引きグループにはあるルールがあったから。
グループ内のルールを破った私が悪い。
絶対的にそう信じるさくらのかたくなさ、中学生らしい潔癖さに心が震えます。
潔癖なのは、さくらだけではありません。
さくらが裏切ったのではない、さくらのせいではないという梨利。
実はあることを深く反省していた勝田くん。
普段の行動からは分からないけれど、心の奥には実はそんな潔癖さを持っていて、
その潔癖さのために深く悩み傷ついたり凹んだりしている彼らに「中学生らしさ」を感じます。
狂い始めた智さんが、過去に友達に書いた手紙
過去に智さんが友達を救うために書いた手紙で、最後に智さん自身が救われるというストーリーの展開が見事です。
今のじだいはたいへんなじだいでむかしよりずっとたいへんなじだいだこらだれでもすぐにくるうんだそうです。
でもくるわないひともいるよ。(中略)
それはきっとこの世にわ小さくてとうといものがあってそうゆうものがたすけてくれるのかもねー
この手紙は稚拙に作られているのがわかっても、それでもグッときます。
小さくてとうといものという言葉が印象に残りました。
おすすめ度★★★★★
森絵都さんづいています。第36回野間児童文芸賞を受賞した作品。