どんぐり君とおにぎり君のママの読書日記

アラフォー、2男の母のブックレビューです。読んだ本の簡単な内容・あらすじ・感想をメモしてます。

藤本ひとみさんの「密室を開ける手」を読みました。

藤本ひとみさんの「密室を開ける手」を読みました。

 

密室を開ける手 KZ Upper File

密室を開ける手 KZ Upper File

 

 

あらすじ

本書の主人公は上杉和典。
数学が何より好きで得意なクールな男の子、開成高校の2年生です。
青い鳥文庫で展開されているKZシリーズの、上杉君。 )

物語は彼のおじいさんが亡くなるところから始まります。
一緒の家に暮らしたこともある祖父が亡くなったのに、クールな彼はあまり悲しみを表に出しません。
お葬式でさえ、欠席していまいます。
そんな和典の態度に、友人たちは注意を促します。

葬儀で家がバタバタする中、和典は母親に頼まれてクリーニング屋に父のズボンを受け取りに行きます。
受け取ったズボンにはメモが付いていました。
「染み抜き(血痕)」
そして、ポケットには長崎への飛行機の搭乗券の半券が入っていました。
搭乗券のことを母親に伝えると、母親は鼻を鳴らして答えます。

「どうせ長崎のでしょ、長崎にいるのよ。パパの女」

父の部屋を調べれば、長崎を多く含した搭乗券がファイルに閉じられているとのこと。
母から得た情報をもとに父の部屋を調べてみれば、搭乗券と共に古びた写真が一枚出てきました。
父の服にはなぜ血痕がついていたのか。
父はなぜ長崎に通っているのか。
この写真は一体どこのものか。
写っているのは誰か。
往復の搭乗券と共に見つかった一枚の写真を元に、和典は謎を追い始めます。
謎を追ううちに疑惑は膨らみ、意外なことに祖父の人生が明らかになっていきます。

感想

上杉くんの成長物語

藤本ひとみさんの本、今でも新刊が出ると懐かしく手に取ります。
昔、コバルト文庫で始まったKZリーズ。
今では青い鳥文庫で藤本さん原作、作者住滝さんで続けられており、もう30冊になろうかというところです。
青い鳥文庫の主人公はアーヤです。

一方、パラで、主人公達がもう少し成長した時のシリーズも進められています。
こちらの著者は藤本ひとみさん。
本書、密室を開く手は、主人公達が高校生になった時の様子が描かれたものです。
藤本さんが著者のものは、上杉くんの目線で書かれたものが多いように感じます。
著者的に、上杉くんが一番書きやすいのかなと感じています。

クールで氷の塊のような上杉くんですが、本シリーズでは、ひとつ丸くなった様子が伺えます。
また、これまでの本から、

  • ご両親が不仲、
  • 母親が過干渉

という、家庭環境の不和が窺えましたが、今回、ご両親との関係がより明らかになります。パパは浮気はしていなかったようですね。ほっ。

子供の性格はもちろん、生まれ持ったものもあると思いますが、家庭環境の影響も色濃く受けるでしょう。
上杉家の事情と、上杉くんの性格。
彼のクールさは、この家庭で培われて、助長されたのかなと、著者の初期設定からの計算をうかがわせました。
本書は彼の成長物語であり、上杉家の成長物語。
と受け取りました。

アーヤと付き合っていたのは……

本書でアーヤと上杉くんがつき合っていたということが明らかになりました。
しかし、そのお付き合いは上杉君のお母さんが過干渉であるため終わってしまい、彼女は今ドイツに留学している模様です。
KZは、やはり中学卒業と同じ頃? 解散してしまったのでしょうか。
大分、引っ張られる気がしますが、KZの終わり方も気になり、KZシリーズがうまくまとまることを祈ります。彼らの成長物語は末永く読みたいです。

母の目線で読む

他の本で、上杉君の目線から、母親の過干渉っぷりが描かれたときは、それは全くうざいなと感じたものですが、今では、私には上杉君のお母さんがそれほど異常には思えません。
母の目線として考えれば、気まま行動する男の子に干渉したい気持ちや、囲いたい気持ちもわかる気がするのです。
藤本ひとみさんのキラキラした男子が出てくる小説を、その母親目線で読む日が来るとは思ってもみませんでした。。。
理想的な思春期の両親って、どんな感じなんでしょう。
過干渉も違うし、無干渉もまた違うと思うのです。
しかし、男の子はなかなか家の外であったことをお話ししてくれないので、適度な関係って難しそうです。
上手なコミュニケーションができる親子関係を築きたいものですが……子供が成長する過程で、徐々に適切な距離感をさぐって修正していくことこそが大事なんでしょうね。

おすすめ度 ★★★

Upper Fileは本作で2冊目。KZメンバーの将来が気になる方には、是非。

 

失楽園のイヴ KZ Upper File

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密室を開ける手 KZ Upper File

密室を開ける手 KZ Upper File