どんぐり君とおにぎり君のママの読書日記

アラフォー、2男の母のブックレビューです。読んだ本の簡単な内容・あらすじ・感想をメモしてます。

柚木麻子さんの「さらさらながる」を読みました。

柚木麻子さんの「さらさらながる」を読みました。

 

さらさら流る

さらさら流る

 

 

あらすじ

自分のヌード写真がネット上に流出してしまったら……
本書は元カレに取られた自分の裸の写真がネット上に流出してしまった、そんな事件に遭遇してしまう菫(すみれ)の物語です。
東京生まれ東京育ち、温かい家庭に恵まれ、まっすぐに育ったすみれは大学に入り、初めての彼氏ができます。
彼の名前は光晴。
2人はとある飲み会の帰り道に暗渠を探す散歩をすることをきっかけに付き合い始めます。
お付き合いをしている間、複雑な家庭環境に育った光晴は東京で何不自由なく育ち、温かい家庭に恵まれたすみれに複雑な感情を抱きます。
すみれのヌード写真を撮らせてもらったのもその一つ。
光晴は、すみれが嫌がる姿を見ること自体に、後暗い喜びを感じます。
2人は4年間の付き合いを続けますが、社会人になってしばらく経つと別れてしまいます。
食品会社の広報の仕事をしているすみれはある時、仕事中に自分の裸の写真を発見します。
あの時の光晴にとらせた写真だと気づくすみれ。
なぜ写真は流出してしまったのか。光晴は意図的に流出させたのか。
すみれは深く傷つき、会社に行くのがやっとという日々に陥ります。
物語は光晴の視点に移り、なぜ写真が流出してしまったのか、その真実が徐々に明らかになります。
そして、すみれは温かい家族と親友とによって癒され、再生されていきます。
このように、
「離婚した元配偶者や別れた元交際相手が、相手から拒否されたことの仕返しに、相手の裸の写真や動画など、相手が公開するつもりのない私的な性的画像を無断でネットの掲示板 に公開すること」
をリベンジポルノというそうです。
本書はリベンジポルノの被害者となったすみれの再生の物語です。

感想

スマホで、ごくごく当たり前に写真が撮れるようになり、それを世の中に公開することが簡単になった昨今、このような被害に遭う女性も多いのかと思うとやりきれない気持ちです。
物語の後半は光晴の視点に移り、光晴の心情も明らかになります。
光晴自身も家庭環境に事情があった。
それでも女性の目線で見れば光晴は決して許せないでしょう。
物語の節々に登場する暗渠は、思いがけず訪れる人生の落とし穴や、暗い時期メタファー。
ごくごく恵まれた家庭環境に育ったまっすぐなすみれは、自分の意志とは無関係に表れた暗渠に、一旦は落ちてしまう。
温かい家族や親友に助けられ、すみれは暗渠を抜け出します。
果たして光晴のその後はどうなるのでしょう。
「リベンジポルノ」という言葉を初めて知るとともに、すみれにとって、人生に不意に訪れる暗渠から救ってくれる家族と親友があって良かったと思える作品でした。
すみれを決して責めずに、それぞれのやり方で肯定してあげられる家族が、ゆりが、光ります。

もっと一般化すると、何か、自分ではどうすることもできない事故に遭遇し、傷ついてしまったときに読む物語といえそうです。

おすすめ度 ★★

さらさら流る

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